搬送姿勢を科学する② ~あら不思議、反対側向くだけで?!~
楽しみにしていた方、お待たせしましたー。
(平日毎日更新を目標にしていましたが、なかなか達成できず…)
今日も搬送姿勢について。ターゲットは救命士さんです。
つい1-2か月前にあった実話(プライバシーの観点から一部アレンジ)です。
とある疾患でA病院に通院歴のある70代の男性患者。呼吸困難で救急搬送されました。本人は動くのがつらく、右側臥位から動けず。呼吸数:30回、SpO2:80%(10Lリザーバー)の状態で、救急隊からは「10LリザーバーでもSpO2 80%台です」という電話情報。
A病院に到着すると、医師が「頑張って左側臥位にしましょう」という不思議な指示。ご本人は動けないので、医療者数人で左側臥位にしてあげると、、あら、不思議。みるみるSPO2は上昇し、100%に。
さて、何が起こっているのでしょうか?
これが典型的な側臥位呼吸(trepopnea)です。
側臥位呼吸とは、側臥位である側では呼吸状態は悪化するのに、反対の側臥位では逆に呼吸状態が急に回復するという呼吸困難を意味します。
McGeeという身体所見の本をひも解くと…
側臥位呼吸が生じるのは主に3つの状況とされています
①片側の肺疾患(N Engl J Med. 1981;304(9):523)
これが最も頻度が多いです。
肺の低酸素の原因機序:換気血流不均等の考えの応用型です。
悪い肺を下にすると、重力の影響で血流が悪い肺にばかり血流が流れ、十分な酸素化がされず、SpO2が低下してしまう。逆に良い肺を下にすると、重力の影響でよい方の肺に血流が多く流れ、酸素化がしっかりなされるというわけ…。
小難しいことなしに、Good side downで覚えましょう!
②拡張型心筋症の心不全
右側臥位がよいらしいです。
ただその機序は厳密にはわからず、拡張型心筋症で左肺に無気肺が多い?右室への前負荷変化?などといわれてはいます…(ちなみに管理人は見たことはありません)
③縦隔・気管内の腫瘍
体位によって、気道や大静脈を圧排してしまうことがあるためとのこと(これまた見たことはありませんが…)
ちなみに最初の症例は、右片側に大量の胸水があるケースでした。
救命士さんの使いどころとしては
A:事前情報で片側肺疾患が分かっている(…って当たり前?)
B:聴診して明らかな左右差がある(片方だけすごいcracklesがするとか、片方だけ呼吸音がほとんどしない等
)
がよいケースです。
日々是勉強!
*さて、今年1年ももう終わろうとしています。管理人はこの1年様々な挑戦を行った1年で、みなさんのご支援でなんとか終わることができました。このブログも初めて早1カ月以上。来年度は、平日毎日更新を体現すべく頑張っていきます。是非応援お願いしますね。
なお、このブログは明日12/30~1/6までは冬季休業としてお休みさせていただきます。来年は1/7からスタート予定です。お楽しみに!