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搬送姿勢を科学する③

新年あけましておめでとうございます。

昨年半ばから始まった、このブログ。

総合内科医の立場からみた、ちょっとした医療のコツを

特に救命士を中心としたコメディカル向け+研修医に発信していきます。様々な職種特有の秘伝の技を職種を超えて共有しあい、

結果として患者さん、社会に貢献できることを理念とします。

そのために、より多くのことを発信すべく平日毎日更新を今年こそ達成すべく頑張っていきます。皆さん、是非応援お願いします。

さて、新年1発目目のネタ:平臥呼吸です。

昨年からの続きで、搬送中の患者の姿勢を科学的に考察しようというお話の続きです。今回も主なターゲットは救命士さんです。

このシリーズの最初に例示した起坐呼吸。心不全や重症呼吸不全などでは、頭を上げている方が呼吸が楽というもので、救命士さんもよく経験している現象だと思います。

今回ご紹介するのはその逆:寝ている方が呼吸が楽、むしろ起こすと呼吸が苦しい:平臥呼吸(platypnea)という場合があるというお話

この報告は歴史が古く、McGeeをひも解くと、

1949年に報告され、1969年に平臥呼吸platypneaという用語があてがわれたとのこと(N Engl J Med. 1969;281(24):1347–1348 )。そんな古くから知られる平臥呼吸ですが、実はその詳細な機序は不明なようです。臥位で右ー左シャントの量が増える(結果、肺を通らない血液が増える=酸素化悪くなる)と推定されてはいるようですが…。

詳細な機序は不明でも、その起こる疾患は、複数報告されており、どうやら右ー左シャントが生じる疾患のようです。McGeeではさらに、A:心臓内でのシャント B:肺内でのシャントに分け

A:心臓内での右左シャント:卵円孔開存、ASD など 

B:肺内での右左シャント:肝肺症候群を生じえる慢性肝疾患 など

が挙げられています。

これらをプレホスの段階で既往症の情報なしに判断するのは、ほぼ不可能でしょう。そのため、救命士さんの使いどころとしては、個人的には以下の2だと思います。

①患者が「起きると苦しい」といった場合には、患者の要望に応じて臥位のまま搬送し、そのことを搬送先Drに伝える(平臥呼吸を知っているDrならこの情報から一部の心疾患や肝疾患を疑うので)

②肝硬変がわかっている患者では、とるべき姿勢を判断するため、楽な姿勢を患者自身に積極的に聞く(肝肺症候群という合併症を呈していれば、起き上ると苦しがるし、一方で肝硬変で大量腹水があると、寝ていると苦しがります。ケースバイケースということ…)

呼吸苦でも搬送時の姿勢は疾患によって実は様々だということがお感じいただけたでしょうか?

日々是勉強!

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