搬送姿勢を科学する④ ~腹痛と姿勢~
今日も搬送する姿勢についてのお話。
救命士向けです。
さて、これ、救命士のテキストをみると、腹痛を起こす各疾患のところで、シムス位が楽なことが多いとさらりと書いてあります
(蛇足ですが、シムス位はどうやら2つの姿勢を指すようです。元々は産婦人科医:Simsが提唱した妊婦用の左半腹臥位の姿勢を指します。が、どこでどうしてなったか不明ですが、仰臥位で膝を曲げて上体を少し起こした姿勢もシムス位と表現されることがあります。ここでは後者の意味で使っています)
さてさて、結論から言えば、
腹痛などの内因性の疼痛疾患の時には「患者がとりたがる楽な姿勢で運ぶ」でOKです。
その理由は姿勢によってvitalが悪化する(もともとShockがある腹痛は除く)、原因疾患が悪化するとは考えにくいからです。
ただ、どの姿勢をとりたがっていたかを教えてくれると、大変助かります。というのも、できる医者はそれで診断の大まかな当たりをつけられることがあるからです。
(もっとも、救命士さんからの”ナイスパス”の意図が分からず、スルーする医師も残念ながら多いのが現実ですが…)
その一例を引用すると
①じっとしており体勢を
変えるのを嫌がる、振動で痛がる:腹膜炎
②苦痛だが、七転八倒:腸閉塞
③胸膝位、胎児のように背中を丸めたがる:膵炎
④片方の膝をまげて脚の向きを気にする(正確には股関節を外旋する):腸腰筋膿瘍や腸腰筋血腫などの腸腰筋のトラブル
(Slien W. ed. Cope's Early Diagnosis of the Acute Abdomen. 15th Ed. New York: Oxford University Press;1979)
とのこと。
特に①や③は個人的に大事にしています。(①は救命士に知ってほしいspeed bump signにもつながっていきます。これはまた別の機会に)
改めて。。
内因性の疼痛疾患では、患者がとりたがる楽な姿勢で運ぶ
そのとりたがる姿勢を搬送先の医師に報告すると役に立つかも?!
日々是勉強!