週1:本の徒然書評①
おススメ本紹介
~科学的認知症診療 5 Lessons~
正月に積読していた本をまとめ読みしました
せっかくなので、それを生かして週1を目安に徒然と
本の雑多な書簡を書いてみます。
今回は~科学的認知症診療 5 Lessons~です
高齢者を扱うプライマリケア医・研修医が主なターゲットですが、
病棟看護師や救命士さんにも読んでもらいたい章がありました。
この本の特徴は
①今までにない切り口:認知症診療を診断から治療(非薬物含む)を徹底的にEvidenceに基づいて明快に解説(徹底して曖昧な表現を避けられています、無理なものは無理、わからないことはわからないと明記されています)
②批判だけにとどまらず、具体的な施策についても提言されている
点です
特に、筆者は安易な/誤った検査乱発の診断方法や、投薬に強い警鐘を鳴らしています。それだけならばお堅い本でとっつきにくくなる懸念がありますが、そこを痛快な表現が小気味良く出てくることで、読者フレンドリーな語り口になっています。
例えば、「向精神薬に関する製薬会社パンフレットに使い道はありません。(中略)わざわざ読む暇があるなら昼寝していた方がマシでしょう」(科学的認知症診療 5 Lessons. p210)なんて記載も。いや、なかなか書けない表現ですよ、これ(笑)
実際、管理人もはっとさせられる記載があり、さっそく今後の診療を一部変更しようと考えています。
これだけなら、
”医師が読めばいいんじゃない?”という意見が出そうですが、
実はそうではありません。
例えば救命士さんにはLesson4:精神症状への対応の前半部分の通読をお勧めします。というのも、救急搬送される患者の高齢化:特に認知症合併例が増加しており、その中で、BPSDやせん妄関連の搬送事例が一定数あるのは救命士さんなら実感していただいていると思います。「かかりつけの精神科病院に連れていきたいけど、それ、うちじゃないって言われるし、一方で総合病院だと認知症の症状の悪化だから精神科でしょのなすり付け合いで…、本当困ります」という話を少なからず何回か聞いたことがあります。
”なぜそんな構図・誤解になるのか”、
”実際BPSDやせん妄で、できる医師はどうアプローチしているか”
がとても分かりやすく書いてあります。
これを応用して、認知症患者を搬送する際に、お薬手帳は必須、普段とどう違うかを家族から聴取する、家の中で酒瓶転がってなかったかをちらっと見てDrに報告…などなど、かゆいところに手が届く高齢者搬送ができると思います。詳細をここで書きすぎるといけませんので、この辺りにしておきますが、是非、読んでみてください。
同様に病棟看護師にはLesson4:精神症状への対応の後半~Lesson5:医療者ができること の通読をお勧めします。
「なんで、この(せん妄やBPSDのある)患者にセレネース点滴の指示を入れてないんですか?!」なんて病棟と研修医の会話がこの地域から消えることを切に願います。
2025年問題を真剣に考えるうえで、
高齢者に向き合うすべての医療者・介護者に読んでもらいたい
そんな本でした。
日々是勉強!