3%が心停止?!
今日のテーマは気管挿管、重症患者は準備を万全にです。
(読者ターゲット:研修医などの若手医師と、ERやICUの看護師)
以前も緊急気管挿管のときには、
ABC planningが大事というお話をしてきいました。
念の為、復習しますと…
Assessment:マスク換気困難(MOANS)や挿管困難(LEMON)などの確認
Backup plan:どの器具を使って挿管する?失敗した時用の準備は?
Cordination(call for help):周囲に助けを求める段取りをしておく
でした。
ここで、先日とある意見を若手から受けました
「大事なのはなんとなくわかりますが、
緊急のときに、あれこれ評価するのって面倒なのも本音です」
…なるほど、確かに気持ちはわかります…。
緊急気管挿管のときって、気持ちがはやりますもんね。
ということで、今回は、緊急気管挿管が如何に危険と隣り合わせかというお話をしようと思います。
今回のお話は、Crit Care Med 2018からです。
この報告によれば、ICUでの挿管(≒緊急気管挿管)は1847件中、49件=2.7%が挿管中に心停止しています(!)
もう挿管どころじゃないですね。あっという間に頭真っ白、現場大パニック…
じゃあ、これらの心停止は予測できないかというと
決してそんなことはなく、
有意な予測因子は挿管前の血圧が低い(SBP<90mmHg)、
挿管前から低酸素、
前酸素化なし、
肥満、
75歳以上
がリスク因子だったとのこと。(Crit Care Med. 2018 Apr;46(4):532)
挿管時の急変の予測としてHOP(低血圧、低酸素、pH低下)という語呂が知られていますが、ほぼ同じ因子ですね。
ここでリスクマネージを考えてみましょう。
Crit Care Medの報告を踏まえると…
高齢者は変えようのないリスクですが、
血圧低い人は昇圧薬を使いながら、
前酸素化は当たり前で、少しでも低酸素を改善する努力をするように(Delayed sequence intubationとしてNPPVつける、2人法での慎重なBVM換気など。この辺はまた別の機会で)、肥満ならramped positionなど体位を工夫することでリスクを軽減できますね。
準備なしに約3%の確率で挿管中に心停止するのと、
(心も含めた)準備して挿管するの、
あなたはどちらがよいですか?
日々是勉強!