酸素流量計の深い世界
ABCの安定を極めるシリーズ
B:呼吸を安定する
対象:研修医、看護師です(救命士の方も参考に)
昨日は、「呼吸の30Lルール」のお話しをしました。
ここで、一部の研修医の先生から、こんなご質問がありました。
「30Lなんて、酸素の流量計でみたことありませんけど?」
はい、ご質問ありがとうございます。
今日は予定を変更して、(やや脱線ではありますが)
流量計のお話しをします。
流量計の分類
みなさん、流量計って色々種類あるって知っていますか?
まずは見た目の分類で、
A:フロート式(酸素が流れて、中にある玉が浮くやつ)
B:ダイアル式
今回は誌面の関係上フロート式だけに限定しますが、
さらにフロート式は
①大気圧式
③大気圧式の亜型の微量流量計
③恒圧式
の3種類です
http://www.muranaka.co.jp/online/products/list.php?mode=search&category_id=105275
大気圧式
「大気圧式」では、流量計内部の圧力がほぼ大気圧(1気圧≒0.1MPa)に維持される設計構造になっています。ざっくりいえば、酸素を送り出す力が弱いやつですね。この「大気圧式」流量計を使用する際は、低流量システム(鼻カニューラ、フェイスマスク、リザーバーマスク)に限定して利用します。これは、高流量システムなどの流量抵抗がかかる器具を使用すると、コマの位置で設定した酸素流量より多くの酸素が流れてしまうなど調節ができないためです。
ちなみに微量流量計(=低流量タイプ)は大気圧式の亜型で0.1L/分単位の微調整ができます。ナルコーシスのリスクのあるCOPDなどでSPO2の微妙な管理が必要で、かつ、ベンチュリーマスクなどの高流量システムの酸素投与ができない場合には、使ったりすることがありますね。
恒圧式
「恒圧式」では、流量計内部の圧力に配管圧力(0.4MPa)がかかっているます。大気圧は0.1MPaなので大気圧の4倍の強力な圧がかかっている!という構造です。破損したら怖いことになりますね…。。さきほどの大気圧式と対比すれば、ざっくり言って、酸素が勢いよく出せて、高流量にも使えるやつです。
さて、この恒圧式は流量抵抗のある高流量システム(ベンチュリーマスクなど)であっても正確な酸素流量で使用できることから、高流量・低流量システムともに使用できます。
ただし、恒圧式は酸素配管とつながると使用していないときでも流量計内に高い圧がかかっている=破損のリスクが高くなるので、使わない場合には酸素配管からはずしておく必要があります。
こちらにとてもわかりやすい図が紹介されていました
https://www.kango-roo.com/sn/k/view/3957
見た目の違いはわずか
さて、構造が大きく異なる(はずの)大気圧式と恒圧式ですが、
実は見た目、、ほぼ同じです(苦笑)
じゃあ、どうやって見分けるかというと
A:目盛り(フローメーター)の横にさりげなく0.4MPaと書いてあるのが、恒圧式
B:酸素配管に接続すると、一瞬玉が浮き上がるのが、恒圧式(玉が全く動かないのが大気圧式)
…実際の現場ではわかりづらい僅かな差…
(ゆえに、看護師が混同して使用している病棟を昔、見たことがありました…)
いかがだったでしょうか。
毎日見慣れているはずの酸素流量計。実はそんな酸素にもこんな隠された違いがあったんですねー。
是非、今日みなさん酸素流量計をまじまじと眺めてみてください。意外な発見があるかも。
日々是勉強!