酸素デバイスのFiO2目安表…実は?
ABCの安定を極めるシリーズ
B:呼吸を安定する
対象:研修医、看護師です(救命士の方も参考に)
先週は呼吸の30Lルールのお話しをしました。
この30Lルールをベースに
30L以下の流量=必ずある程度、周囲の空気を吸うシステム=低流量システム
30L以上の流量=そのシステムだけで呼吸するすべての気体をまかなえる=高流量システム
というお話しをしました。
さて、今日は続き
低流量システムというけど、具体的に?
古典的なデバイスは3つ
古典的な酸素投与デバイスは以下の3つです
①鼻カニュラ
②酸素マスク
③リザーバー付き酸素マスク
これらは低流量システム
例えば、酸素マスク5Lでは30-5=25L/分の空気をまわり吸う計算です
ポイントとしては
鼻カニュラ
利点:会話が簡単で、違和感少ない
欠点:6L以上の酸素は推奨されない(∵鼻粘膜の乾燥+吸入酸素濃度の上昇がそれ以上見られない)
酸素マスク
利点:ある程度のFiO2が投与できる
欠点:5L以下は望ましくない(∵再呼吸する分があり、CO2貯留のリスク)
リザーバー付き酸素マスク
利点:リザーバーに酸素を貯めることにより、より高濃度の酸素投与ができる
欠点:リザーバーが常に膨らまないといけない=6L以上の酸素投与が必要
なお、よく投与FiO2の目安としてこんな表がありますね
簡易式としては…
鼻カニュラ=(x×4+20)%
酸素マスク(x-1)×10%
リザーバー付き酸素マスク (x×10)%
で知られています。
結論からいうと、1つの目安として使うのはありです。
ただ、頻呼吸の患者にはこの表よりFIO2は下がる
(=この表は投与できる最大FiO2値というイメージ)ということは知っておいた方がよいです。
たとえば、酸素マスク5L投与時に吸う気体は
呼吸の30Lルールを使って、5/30が純酸素100%、残りの25/30が空気(酸素濃度21%)です。
この際の酸素濃度は算数をつかうと…
100×5/30+21×25/30≒35%
ざっくり40%近いよね、、 という計算です。
ただ、この前提は呼吸の30Lルールでした。
このルールは1回換気量500ml程度で、吸気時間が1秒程度という仮定から来ていたものでしたね。
ただ当然呼吸不全などの患者では、1回換気量が500ml以上なこと、吸気時間も短くなること(例えば呼吸数30回なら吸気時間は0.6-0.7秒程度)になります。ざっくりと言って、頻呼吸の患者では必要な1分あたりの気体は60L程度まで増えうるとされています。
…そうなると、当然上記の計算が大きく変わりますね。
例えば、頻呼吸で1分間で必要な気体が60Lまで膨れ上がったとしたら…
5/60が純酸素100%、残りの55/60が空気(酸素濃度21%)なので
100×5/60+21×55/60≒28%
ね、だいぶFiO2下がりましたね。
まとめます。
①低流量酸素システムは古典的には3つ:鼻カニュラ、酸素マスク、リザーバー付き酸素マスク
②低流量システムのFiO2表は理想上の最大値。頻呼吸の患者では容易にこの数値より下回る
日々是勉強!