【HFNCの使い所は主にICU/HCU②】
- 俊一 柴崎
- May 8, 2019
- 3 min read
管理人は、本日当直明けで、ほぼ寝ていない眠気MAXです…が、
平日毎日更新を達成すべく、頑張りまする!
さてさて、ABCの安定を極めるシリーズ。
ここ連日、呼吸関連でネーザルハイフロー(以下HFNC)のご紹介をしています。今日も対象は主に研修医、ICU/HCU看護師です。
(救命士やER看護師はふーんと眺めてもらえれば結構です)
さて、昨日の復習
・(系統的レビューをみるに)HFNCのエビデンスは
①抜管後の酸素管理としてはよさそう
②陽圧換気を避ける能力は古典的酸素投与に比べて、わずかによいかもだけど…、まだなんともいえない
・加えて費用面は考慮が必要かもしれない
というお話しでした。
では、続きです。
HFNCの使い所を「挿管前の酸素化」にもとめてみます。
結論から言うと、
挿管前の酸素化にも既存の方法を凌駕するものではなさそう…です。
各論をみてみます…
①例えばこんな研究↓
健常成人のボランティアですが、自発呼吸下で比べると、HFNC単独では酸素マスクと比べて呼気終末酸素濃度(ETO2)が低いというstudyがあります。(Eur J Anaesthesiol. 2019 Jan 18. doi: 10.1097/EJA.0000000000000954. [Epub ahead of print])
要は、前酸素化として十分ではない可能性があるというものです。
②実際の患者でもこんなデータがあります↓
挿管前の重症呼吸不全患者で、NPPVと比べて挿管中~後のSpo2低下の程度に差がなかったというもの( Frat, Jean-Pierre, et al. "Non-invasive ventilation versus high-flow nasal cannula oxygen therapy with apnoeic oxygenation for preoxygenation before intubation of patients with acute hypoxaemic respiratory failure: a randomised, multicentre, open-label trial." The Lancet Respiratory Medicine (2019).)

https://pulmonary.exblog.jp/28099338/より引用
③さらには、HFNCに不利なデータが追い打ちを…↓
(もともとはICUでのビデオ喉頭鏡とマッキントッシュ直接喉頭鏡を比べる他施設RCT:MACMAN研究。その事後解析)
挿管前の前酸素化について、各方法を比べると、NPPVが最も優秀。次にBVM換気、リザーバーマスク、HFNCが最も挿管中の低酸素になりやすかった…
( Bailly, Arthur, et al. "Compared Efficacy of Four Preoxygenation Methods for Intubation in the ICU: Retrospective Analysis of McGrath Mac Videolaryngoscope Versus Macintosh Laryngoscope (MACMAN) Trial Data." Critical care medicine47.4 (2019): e340-e348.)
この領域の系統的レビューがまだないため(2019年5月9日現在)、
まだ確かなことは言えませんが、
挿管前のHFNCは少なくともNPPVを超えることはなさそうで、
思ったよりも性能はいけてないかも…という結果なわけです。
なお、、
④一矢報いる研究を念の為に紹介すると…
鎮静した後の無呼吸酸素化(apneic oxygenation)。これには役立つかも( Simon, Marcel, et al. "High-flow nasal cannula versus bag-valve-mask for preoxygenation before intubation in subjects with hypoxemic respiratory failure." Respiratory care 61.9 (2016): 1160-1167.)
(無呼吸酸素化の話は誌面の関係で、今日は詳細は触れません。こちらのサイトに良くまとまっています。 https://knight1112jp.at.webry.info/201904/article_24.html)
色々お話しをしてきましたが、
要は
挿管前/時の酸素投与としても、
HFNCは他と比べて格段に優れているわけではなさそう
というわけです。
抜管後のエビデンス以外は正直あまり強くないHFNC。
当然抜管後の管理はICU・HCUが中心。
(ERでそういう場面ってほぼ皆無ですよね、きっと)
もちろん今後データが集まって、名誉挽回という可能性は残りますが、
ERでのインパクトはNPPVほどないなーというのが、正直な印象です。
(資金が潤沢にあるERなら良いのでしょうが、管理人が所属するような零細ERだと、HFNCを是非買って~という説得材料、厳しいですねー)
見方を変えれば、病棟での使いみちは徐々に見え始めてきたHFNC。
そのため研修医やICU・HCU看護師はその使い方を十分に習熟している必要があります。
明日は、実際にHFNCの使い方をみてみましょう。
日々是勉強!