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NPPV×喘鳴

ABCの安定を極めるシリーズ。

今週も呼吸関連のお話を続けていきます。

今日は具体的にはNPPV(非侵襲的陽圧換気療法)のご紹介をしています。

今日も対象は主に研修医、ICU/HCU看護師です。

(救命士やER看護師はふーんと眺めてもらえれば結構です)

今週の復習

①NPPVって、人工気道を使わないから、非侵襲的という名前(=必ずしも患者が楽とは言っていない…)

②NPPVで予後改善のエビデンスがあるのは、心不全・COPD・抜管後など

というお話でした。

さてさて、今日からNPPVのエビデンスの各論②です。

COPD急性増悪にNPPVは強い武器!

COPD急性増悪のNPPVに対してもコクラン・レビューがございます

(昨日やりました、世界でもっとも信頼性が高い系統的レビューの1つでしたね)

Osadnik CR, Tee VS, Carson‐Chahhoud KV, Picot J, Wedzicha JA, Smith BJ. Non‐invasive ventilation for the management of acute hypercapnic respiratory failure due to exacerbation of chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database of Systematic Reviews 2017, Issue 7. Art. No.: CD004104. DOI: 10.1002/14651858.CD004104.pub4.

これによれば、古典的な酸素投与と比べて

A:死亡率を46%減少(RR0.54 95%CI:0.38-0.76, NNT:12) 中等度の質

B:挿管も65%回避(RR0.36 95%CI:0.28-0.46, NNT:5) 中等度の質

これらは、重度の(呼吸性)アシドーシス:pH<7.30でも、軽度のアシドーシス:pH<7.35でも同様の恩恵だった。とのこと。

特に挿管回避:NNT5って脅威なレベルですね。

しかもアシドーシスは軽微でもこの恩恵は得られるとのこと。

COPDの急性増悪でCO2がたまりだして、pHが乱れはじめたら早期にNPPVつける

というのがこれで実感できますね!

なお、蛇足ですが、COPD急性増悪でNPPVつけている状態で、脚のリハビリをすることはICU入院期間等を

かえるかというのも研究されて、コクラン・レビューも一応出ています。Menadue C, Piper AJ, van 't Hul AJ, Wong KK. Non‐invasive ventilation during exercise training for people with chronic obstructive pulmonary disease. Cochrane Database of Systematic Reviews 2014, Issue 5. Art. No.: CD007714. DOI: 10.1002/14651858.CD007714.pub2.

…が、元になる研究の数・質が不十分なので、よくわからないという結果です。。

一見似ている?喘息でのNPPV恩恵は、まだわからない

喘鳴を起こす疾患3大巨塔:心不全、COPD、喘息…その喘息のお話しです。

喘息でもNPPVの恩恵が大きければ、ERで喘鳴聞こえれば、(結局でもNPPVつけるなら)ひとまずNPPVつけとけーみたいに話がシンプルになりそう…ですが、

残念ながらそうシンプルではありません。

喘息の増悪へのNPPVの効果はこれもコクラン・レビューは出ています。

Lim WJ, Mohammed Akram R, Carson KV, Mysore S, Labiszewski NA, Wedzicha JA, Rowe BH, Smith BJ. Non‐invasive positive pressure ventilation for treatment of respiratory failure due to severe acute exacerbations of asthma. Cochrane Database of Systematic Reviews 2012, Issue 12. Art. No.: CD004360. DOI: 10.1002/14651858.CD004360.pub4.

…が、研究の質・数の不足で結論が出せないという結果でした。2012年です。

その後もちらほら系統的レビューは出ています。(例:2017年の Journal of Allergy and Clinical Immunology)Fergeson, Jennifer E., Shiven S. Patel, and Richard F. Lockey. "Acute asthma, prognosis, and treatment." Journal of Allergy and Clinical Immunology 139.2 (2017): 438-447.

一応NPPVの方が古典的な酸素投与よりよい結果の傾向にはある…が、統合する際の質の問題が大きく、やはり、結論が出せないという結果でした。

まとめます。

喘鳴を起こす3大疾患のうち、

①COPD急性増悪はNPPVの効果は大きい!

②喘息はよいかもしれないけど、なんともいえない…

③NPPVの戦略という意味でも、ERでは、喘鳴の疾患で心不全・COPD・喘息を鑑別するという努力が必要

(もちろん、初診の際には悩ましい事例ってありますけどね。。)

日々是勉強!

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