人工呼吸管理の極意は3つである!
ABCの安定を極めるシリーズ。
呼吸関連シリーズが続いており、具体的にはNPPV(非侵襲的陽圧換気療法)のご紹介をしています。
今日も対象は主に研修医、ICU/HCU看護師です。
(救命士やER看護師はふーんと眺めてもらえれば結構です)
先日までの復習
①NPPVで予後改善のエビデンスがあるのは、心不全・COPD・抜管後など
②NPPVのコツはマスクフィッティングと患者の協力
というお話でした。
では、患者さんに「これで楽になりますよ」と説明しながら、
やさしく適切なマスクフィッティングをしたとして、
「で、そこからどうするの?」をやろうと思います。
人工呼吸器は3つの視点で調整!
NPPVで使うモードは大きく2つ:①CPAPモード ②S/Tモード
このモードの使い分け、詳細を…としたい所なのですが、
その前に知っておくべき前提知識があります。
それは
NPPVもIPPV(挿管・気切しての人工呼吸)人工呼吸器管理にチェックすべき3つの視点です。
具体的には…
①酸素化 ②換気 ③同調性 です。
そして、それらを調整する設定項目は…
①酸素化:吸入酸素濃度(FiO2)と呼気終末陽圧(PEEP)
②換気:呼吸回数と1回換気量(その1回換気量は吸気圧やプレッシャーサポートと呼ばれる圧で規定される場合と、IPPVの場合はモードによって直接、1回換気量を設定することもできます)
③同調性:IPPVなら吸気トリガーや吸気速度/時間。NPPVならライズタイムや吸気時間(+マスクフィッティングなど)
です。
特に同調性ってすごく大事です。
…というのは、人工呼吸器の大事な役割の1つ、呼吸仕事量の軽減があります。同調性が悪いと、呼吸仕事量がかえって増えて、良いことをしているつもりが、
かえって患者の負担に…ということにもなりかねないんです。
呼吸仕事量ってイメージ湧きづらいでしょうか。では、健康な皆さんが100mを全力でダッシュするとイメージしてください。別に心臓や肺の疾患がなくても、皆さん走り終わった後は、膝に手を付きながらややかがんだ姿勢で、肩を使った大きな呼吸をしますよね。これが呼吸仕事量が増えた状態です。この例ならば運動によって、酸素の必要量が増えたので、それをカバーするために「頑張って呼吸している」状態です。さて、みなさん、そんな呼吸を「あと3日続けてください」と言われたらどうですか?めちゃくちゃ辛いですよね。ただ、重症患者さんは酸素の必要量が増えて、そんな「頑張った呼吸をし続けないといけない」というケースがとても多いです。そこを人工呼吸器でサポートしてあげる、頑張る分は人工呼吸でやってあげる、それが呼吸仕事量の軽減です。
ただ、このサポートというのがミソで、「余計なお世話」になれば逆効果ということが起こります。息を吸いたいタイミングで、空気を送ってくれなければ、苦しく感じてさらに息を吸おうと頑張っちゃいますもんね。これって、結局「余計に頑張らせてしまう」=呼吸仕事量は却って増えてしまうというわけです。
さて、まとめます。
人工呼吸器は3つの視点で調整を
①酸素化:吸入酸素濃度(FiO2)と呼気終末陽圧(PEEP)
②換気:呼吸回数と1回換気量(その1回換気量は吸気圧やプレッシャーサポートと呼ばれる圧で規定される場合と、IPPVの場合はモードによって直接、1回換気量を設定することもできます)
③同調性:IPPVなら吸気トリガーや吸気速度/時間。NPPVならライズタイムや吸気時間(+マスクフィッティングなど)
なお、それぞれの設定項目をいじると、
なぜ上記の視点が調整できるかは原理・理屈はあるのですが…
それは人工呼吸器にある程度なれてきたところで、
また勉強していただければよいと思いますし、
このブログでもまた別の機会でやれたらと考えています。
(いきなり実践とやや離れた難しい理論の話をされても、うんざりでしょ?)
明日以後、NPPVの細かいモードについてやっていきますね。
日々是勉強!