S/Tモードを語れればNPPVは無敵に?!
重症患者はABCの安定を…
わかってはいる、実際に周りの人はやれている
…けど、私…自信がない…
そんな人にお送りし続けているABC安定基本シリーズ。
(最近、救命士さんがやや置いてけぼりです、すいません。
来週の途中から新シリーズの予定ですので、お楽しみに)
NPPVをお送りしています。
昨日はNPPVのうちCPAPモードのお話しをし、
①NPPVのモードは血ガスのCO2で選択。二酸化炭素たまってなければCPAPモードで
②FiO2:100% EPAP:4でスタート。その後EPAPあげてFiO2さげて…と調整(高すぎるFiO2は死亡率上げる傾向)
③目標はSPO2 96%以下(高すぎるSPO2は死亡率上げる)
ということをご紹介しました。
今日はS/Tモードについてご紹介します。
NPPVの醍醐味が詰まったS/Tモード
Spontaneous/Timedの略がS/Tモードとのことですが、
名前はさておき、ポイントは3つ
A:使うのはCO2貯留時の呼吸不全(=Ⅱ型呼吸不全)
B:設定項目は、酸素化・換気・同調性を意識して
C:治療失敗にすぐ気がつく
です。
それぞれ解説していきます。
A:使うのはCO2貯留時の呼吸不全(=Ⅱ型呼吸不全)
これはS/Tモードの性質:換気もしてくれる陽圧換気だからです。
換気=CO2をコントロールできるようになるので、CO2貯留時の呼吸不全で使用するわけです。
どの呼吸不全もこじれるとCO2は貯留しますが(例え肺炎・心不全でも)、よくある例はCOPDや喘息の増悪ですかね?
B:設定項目は、酸素化・換気・同調性を意識して
以前の「人工呼吸器の極意」でもお話しました。
さて、具体的な設定は
酸素化:EPAPとFiO2 = CPAPと全く同じ
換気:IPAPとEPAPの差*、呼吸回数
同調性:ライズタイム**、マスクフィッティング***
*IPAP-EPAP=(IPPVでいう)PSに相当
この差が1回換気量に相関。
例:IPAP:8、EPAP:4とIPAP:14、EPAP:10はともに同じ1回換気量になる
決してIPAPの絶対値で決まらない!
**ライズタイム:吸う空気を機械が送り込むスピード(IPPVの吸気時間に相当)
明確に決まったものはないが、患者さんが「吸いやすい」と感じることが大事。急性呼吸不全やCOPDでは短め:0.1秒に、
神経疾患での呼吸不全は長めの0.3-0.4秒程度にすることが多い
*** マスクフィッティング:フォアアームなどをいじりながら、
エアクッションが十分に聞いて、圧でマスクが浮き沈みが分かる程度がベスト。
NPPVはそもそもリーク前提に作られているので、リークは過度に気にしない。30~50L/min弱程度のリークは通常。
C:治療失敗にすぐ気がつく
CPAPの時も、もちろんそうですが、
特にS/Tモードは治療失敗に気づかずにダラダラいくと…
悲劇が起こります。
…というのも、酸素化はSPO2でリアルタイムにわかりますが、
換気が実はうまくいっていなくて、CO2貯留が悪化している…
なんてことが起こり得るからです。
CO2貯留しすぎれば、血液のpHが崩れ、成れの果ては心停止…です。
(正確にはSpO2の酸素解離曲線が呼吸性アシドーシスで変化するためSpO2でもCO2貯留はなんとなく気がつくんですが、今日の本筋ではないので、また後日に…)
なので必ず、30-60分後に血ガスを取りつつ、
他にも呼吸回数含めたバイタルサイン、呼吸補助筋などにも注目します(換気を少しでも改善しようとがんばっていないか)(Crit Care Med. 2007;35:2402)
特に治療失敗の80%は48時間以内にに起こるとされ、さきほどあげたCO2貯留などのトラブルは通常1h以内に特に多いです。(BMC Pulm Med 2014; 14: 19)そのため、NPPV開始48時間はかなり気を使いますし、特に最初の1時間は治療失敗にならないかを入念に見ます。
いかがだったでしょうか?
NPPVのS/Tモードについてご紹介しました
A:使うのはCO2貯留時の呼吸不全
B:設定項目は、酸素化・換気・同調性を意識して
C:治療失敗にすぐ気がつく
これら3つのポイントを意識してやってみると
NPPVがさらにおもしろくなり、「人に語りたくなります」!
人に語れるようになるまで、NPPV使いこなしてみませんか?
日々是勉強!