”既知”と”未知”を分けると、”道”が見えてくる
ABC、崩れていると慌てますよね。
安定のた
めのツールをご紹介するシリーズ
B:呼吸の安定としてNPPVシリーズをしばらくお届けしました。
今日は(ひとまずの)シリーズ最終日として、
NPPVのわかっていること、わかっていないことと題してお届けします。
NPPVのわかっていること
以前もご紹介しましたが、NPPV使用することで挿管避けられる、死亡率下がるなどのEvidenceが厚いのは、①心不全 ②COPD ③抜管後 でした。
例えば、同じ喘鳴を起こす喘息では、実はEvidence△でした。
さてさて、では他の疾患をご紹介していきましょう。
A:肺炎:実は条件を限定しても△
実はCommon diseaseだからこそ知りたいところですよね。理屈の上では、痰が多いと気道のトラブルで治療失敗は多そう…。さてさて。
肺炎についてのNPPVですが、系統的レビュー:J Crit Care. 2019 Feb;49:84-91他の系統的レビューでは、肺炎からのARDS(ここではAcute pulmonary edemaという表現になっています)やがん患者や移植患者の肺炎は古典的な酸素投与に比べて挿管移行率は低いという結果にはなってはいます。…が、各研究の質がいまいちなので、かなり割り引いて解釈した方がよさそうです。要は「本当?」
肺炎からのARDSや免疫不全の肺炎ではNPPVは考慮してもよいかもだが、△!
B:神経筋疾患:実はまだよくわからない
急なCO2貯留で運ばれる、重症筋無力症やALSってありますよね。特に未診断のときには厄介かも。。
さて、こちらに関しては、2017年にコクランが出ています(Cochrane Database of Systematic Reviews 2017, Issue 12. Art. No.: CD008380. DOI: 10.1002/14651858.CD008380.pub2)
…が、オチは「系統的レビューやろうとするもRCTがなく、良いか悪いかわからない」という結論。ちょいと苦笑いです。。ただ、これだけデータが不足している領域って身近にあるんですね。個人的にはとてもこのパターンでのひとまずNPPVはお世話になっていますが、、
C:上腹部手術後の呼吸不全。意外な視点?!Evidence△
内科医の立場からはへーっと思いましたが、上腹部術後の呼吸不全についてのNPPVもコクランが系統的レビューを出しています。(Cochrane Database of Systematic Reviews 2015, Issue 10. Art. No.: CD009134. DOI: 10.1002/14651858.CD009134.pub2.)これによると、挿管率を下げ、IC期間を短くする。呑気でのトラブルなどの上腹部術後合併症などは増やさなかったという結果。ちなみに死亡率は変えないとのこと。バイアスが多く、質は低いため、これも少し間引いて解釈する必要はありそうです。…が、「術後だから、NPPVは使えない」とはしなくてもよいかもしれません。どうしても挿管したくないという背景では一回NPPVは考慮かも。
D:その他。本当にNPPVはQOLさげない?…よくわからず
最後は番外編です。NPPVは本当に「楽」なのか?「QOL下げずに治療できるのか?」ということにチャレンジした系統的レビューがあります。(Crit Care Med. 2018 Aug;46(8):1209-1216)
結論から言うと、データが限られており、結論出せず…とのこと。
ある程度の結論が出なかったことは残念ですが、こういった試みは個人的にはすごい好きです。
以前もお話ししましたが、NPPVの「Non invasive」は人工気道を用いないという意味であって、「決して楽だ」という意味は入っていません(もちろんメーカーさんは「患者さんの負担が減って」といいますが)NPPVは確立しつつある治療だからこそ、QOL評価などの視点はより一層大事だと思ってます。
いかがだったでしょうか?
まとめます
A:肺炎 → 肺炎契機のARDSや免疫不全なら…使える…かもだが、△
B:神経筋疾患 → 不明
C:上腹部術後の呼吸不全 → 合併症増やさず挿管減らせるかも…だが、△
D:QOL → 不明。
ね、たかがNPPVですけど、奥深い世界が広がってましたね。
意外にわかっていないことも多いんだなーと。
日々是勉強!