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データを因数分解し、対策を練る

近年増加傾向の高齢者救急。

増えているからこそしっかりやらないといけない高齢者救急。

でも、現実は煙たがられるのも、また高齢者救急。

そこでお伝えしている本シリーズ。

ターゲットは救命士と研修医含む若手医師です。

先日は高齢者は症状が非典型になりやすい

ということをお伝えしました。

「じゃあ、どうすんじゃい?!」というのが今日のテーマです。

結論から言います、

①疫学データを使いこなせ!②典型的ピットフォールを意識せよ!です。

①疫学データを使いこなせ!

総務省の報告によれば、高齢者の救急の疾患は臓器別にみると、脳疾患(14.0%)、心疾患(12.7%)、呼吸器系(11.3%)、消化器系(9.3%)とのこと(総務省消防庁「平成22 年版救急・救助の現況」www.fdma.go.jp/neuter/topics/houdou/2212/221203_1houdou/01_houdoushiryou.pdf)。これだけで約半分ですね。

さらによくみると、この4大臓器は、特段どこかが多いわけではありません。

そのため、明らかな脳卒中(急な片麻痺など)や心筋梗塞(モニターでST上昇)などあれば、脳外科や循環器単科の病院にも運べます。…が、判断に迷う例では、どうしても広く見てくれる所、総合病院に頼りたくなる救命士の気持ちはよくわかりますね。

①-1:脳疾患データを因数分解

さらに行きましょう。

脳疾患はもちろん脳卒中が多い(日老会誌 2011; 48: 312)

ですが、

転倒の多い高齢者は慢性硬膜下血腫の頻度も実は少なくない!

のがポイントです。

特にこの慢性硬膜下血腫が厄介!

どうして厄介かというと…

典型的には徐々に悪化する認知機能、歩行障害、失禁…と習いますが、

そうでないことが如何に多いことか!

慢性硬膜下血腫はちょっと様子が変、頭が重いぐらいで受診することも多いです。しかも症状が一時的(で消えてしまったり)だったり、大きく変化したりもよくある話(Am J Med. 1992; 92: 698. )。

なので「昨日まで元気だったけど、なんか今日の朝からおかしい」というプレゼンテーションで(転んだのはだいぶ前の)慢性硬膜下血腫がありえるというわけです。(実際、私も過去に何回か経験があります)

①-2:呼吸器疾患データを因数分解

もうひと押し。

”呼吸器系”とされるもののほとんどは「肺炎」です。

若年者の肺炎は発熱・咳嗽があって…ですが、

高齢者では発熱も咳嗽もない肺炎はよくあります(Crossley KB, Peterson PK: Infections in the elderly, In: Mandel, Douglas, and Bennett’s Principles and Practice of Infectious Diseases, 7th ed, Churchill Livingstone, 2009.)。

もっといえば「なんかぼーっとしている」だけでくる肺炎はあります。

ので、神経所見がはっきりせず、高血圧を伴わない高齢者の意識障害では

肺炎をはじめ積極的に感染症を疑うのが望ましいのかもしれません(BMJ 2002; 325 : 800)

まだまだお伝えしなければならないことがあるのですが、

紙面の関係上、今日はここまで。

今日のプチまとめ

・高齢者は、脳・心・肺・消化器 疾患で運ばれる事が多い…が、どこか特段して多いわけではない (→迷う症例が総合病院に集まるのは致し方なし)

・神経所見がはっきりしないけど、家族が変という時に「(onsetが急でも)慢性硬膜下血腫と感染症」は鑑別に(このTipsはもう少し拡張したものを次回?次次回?お伝えします)

日々是勉強!

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