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高齢者救急、トラブルになるからくりを徹底解説!

近年増加傾向の高齢者救急。

「あー、面倒だなー」で、深く考えずに適当にやっていませんか?

新世代総合内科のデータでの語り口を元に

学びを深めましょう!というのが本企画。

さてさて、今日はトラブル×高齢者救急です。

皆さんの中では、「色々診察・検査した。やっぱり大したことはなかった。

はい、ご帰宅してもらおう。え、本人・家族が入院を希望している?!

いいですか、入院の適応はありません!」とご家族とトラブルになった経験ありませんか?しかもその後、後から確かに重たい疾患が見つかり、さらにトラブルがこじれたケースはありませんか?

これは自験例ではなく、

日内会誌 2014; 104: 526に載っていたケースです。(実際のケースを一部修飾とのこと)簡単に概要をご紹介します。

………

90代女性。深夜に発症した腹痛で救急搬送。軟便・嘔吐あり。

2日前に胃腸炎と診断を受けている。認知症が強く、自宅で娘が介護中。

Afに対してアスピリン内服中。来院時には腹痛の訴えは曖昧、バイタルは正常で

ECGも洞調律でST変化なし。その他の検査でも異常はなかった。

念の為の造影CTをしたが、担当医は特に問題なしと判断した。

担当医は帰宅させようとしたが、ご家族が「依然症状が続いているので入院させてほしい」と

担当医は「介護が必要なら老人病院を紹介します。具合が悪くなったら、また救急車で来てください」

との返し。その後娘が再三お願いするため、担当医は渋々入院とした。

入院後に造影CTで上腸間膜動脈塞栓が見落とされていることが判明した。

数日後、同患者は亡くなった。後日、ある弁護士事務所から病院に通知書が届いた…

(日内会誌 2014; 104: 526より一部改変して引用)

………

みなさん、いかがだったでしょうか?

本例は確かにしっかり検査はしています。

ただ、担当医が未熟で上腸間膜動脈塞栓を鑑別にあげ、動脈の造影欠損の有無に注目をしていない

…などなど医学的にも問題点は確かにあります。

が、個人的に注目するのは、その話し方です。

担当医は(娘の介護疲れ?での)認知症患者の社会的入院を求められていると判断してしまい、「どうしても返さなければ」と強い語気で家族に説明していたんじゃないかと想像します。

この”関係を悪化させるような”強い語気での説明は(時に必要な事はあると思いますが)、原則避けるべきです。

それは、心理学の現象「返報性の原理」が教えてくれています。

これは、「よいことをされたら、よいことを」「敵意を向けられたら、敵意を向ける」という”目には目を”の人間の心理です。みなさんも例えばお土産をもらったら、「あ、お土産返さなくちゃ」と思いますよね?それです。

さて、「医師がイライラしながら、こちらにぶっきらぼうな説明をしている」と感じると、感じた患者/家族側はどう反応するでしょうか?

そうです、同じようにイライラして、医師に攻撃的になりますよね?

実際、この症例はその後、上腸間膜動脈塞栓が見つかり、その後の説明などをしても結局、”弁護士沙汰”になっています。

最後に「The M&M Files」というところから、

ERでの教訓を引用して、今日の結びとします。

①最終的に生命を脅かす急病・外傷で ②主訴・症状が非典型的 or 一見軽微 ③医師が未熟 or 疲弊している状況で ④医師と患者/家族との人間関係が悪化している  こんな時に大きなトラブルが発生しやすい(Edwards FJ : The M & M Files Morbidity & Mortality Round in Emergency Medi cine, 2002.)

高齢差者救急は①②が多く、時に④が伴いやすく…

しかもERの現場では(システム構築ができていないと)③も伴いやすい。

ね、ERでの高齢者救急は実は結構なトラブルにつながる潜在的リスクをかかえているのがおわかりいただけたかと思います。

じゃ、どうするか?今までは①②に注目して解説していきました。来週以後は③④の視点でさらに筆者の視点を加えて解説していきます。

お楽しみに。

日々是勉強!

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