フレームワーク:ISARをご紹介
一見軽症、でも重篤な疾患がまじりやすいが非典型。
そして時にトラブルになりやすいのが高齢者救急。
これから数回に渡って、「では、トラブルを減らすには?」ということを
理論+私の視点も交えながらご紹介します。
さて、前回は
「The M&M Files」(Edwards FJ : The M & M Files Morbidity & Mortality Round in Emergency Medi cine, 2002.)を引用して、
トラブルになりやすいポイントをお伝えしました。
①最終的に生命を脅かす急病・外傷で
②主訴・症状が非典型的 or 一見軽微
③医師が未熟 or 疲弊している状況で
④医師と患者/家族との人間関係が悪化している
今までの数回で①②の観点で色々お伝えをしてきましたので、
今回は③について少し皆さんと情報を共有したいと思います。
医師が(高齢者救急に)未熟…
「そんなのトレーニングするしかないじゃん」と言われそうです。
確かにそうですね。一方でこのシリーズ最初にお伝えしたように
”老年科”があまりない日本医療の現状では「系統だったトレーニング」ができるところは
極めて限られているというのが現状です。
この”系統だった”というのが個人的にはポイントだと思っており、
特有の考え方・フレームワークを知り、自然と使いこなせる必要があります。
そこで今日は、高齢者救急で「いざ、帰す?」という時に使うフレームワークの1つをご紹介。
じゃじゃーん!ISAR~!!
皆さんISARというのはご存知ですか?
Identification of Seniors at Risk scoreの略で以下の6項目をチェックします。
1.元々、日常生活に介護が必要
2.今回の疾病でより介護度がUP
3.6ヶ月以内の入院歴
4.視力に問題
5.記憶力に大きな問題
6.ポリファーマシー(もともとの報告では3種類以上)
というものです。
うち、もともとの提唱では2項目で陽性と取り、
帰宅時に「ハイリスク」と判断します。
こんなの有用なの?とお思いになるかもしれません
こちらの報告をみると(Rejuvenation research 2012;15:288-294.)
ISARの陽性は、
6ヶ月以内のER再来を感度74%、特異度39%(=陽性尤度比:1.2)、AUC:0.60。入院を感度77%、得度38%(=陽性尤度比:1.2)、AUC:0.63、死亡を感度91%、特異度37%(=陽性尤度比:1.4)、AUC:0.74で予測するようです。
(AUCって何?という方はこちらなどをご参照ください。初心者向け、ちょっとわかる人向け)
ちなみに、
ERで血液検査で入院する/しないの判断の診断能:AURは0.79程度です。(Emerg Med Australas. 2014;26:361-7.)
もちろん、ISARは絶対的な指標ではありません。でも皆さんがとても大事にしている「採血の入院すべきかどうかの診断能」よりちょっと劣っているだけのISAR。使い所を工夫すれば、補助になってくれそうと思いませんか?
次回以後は、ISARを使ってどうするか?をみなさんと考えていこうと思います。
日々是勉強!