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老年救急のイノベーション?!

患者は増加傾向、加えてトラブルになりやすいのが高齢者救急。

これから数回に渡って、「では、トラブルを減らすには?」ということを

理論+私の視点も交えながらご紹介します。

前回はISARについてお話しました。

改めて復習しますと、

高齢者を帰宅させる時に”色々配慮が必要かどうか”を判断するフレームワークで

以下の6項目をチェックします

1.元々、日常生活に介護が必要

2.今回の疾病でより介護度がUP

3.6ヶ月以内の入院歴

4.視力に問題

5.記憶力に大きな問題

6.ポリファーマシー(もともとの報告では3種類以上)

うち、もともとの提唱では2項目で陽性と取り、

帰宅時に「ハイリスク」と判断します。

さて、では「ハイリスク」と判断したら、どうするか?

イノベーション:老年移行ケアの得意なナースの力を借りる?!

こんな論文をご紹介。

(老年期)移行ケア看護師が、老年救急外来における”イノベーション”だ!というタイトルです。(Journal of the American Geriatrics Society 66.3 (2018): 459-466.)(”イノベーション”は言い過ぎな気もしますが…)

中身を読んでみると、

米国:Mount Siai Medical Center、St Joeseph's Regional Medical Center、Northwestern Memorial Hospitalの3つの病院からの報告です。

それぞれの病院に在籍する、老年期移行ケアの看護師が、帰す時にハイリスクと判断された患者に、認知機能(Mini-Cogなど)やせん妄(CAM)、機能評価(ADLのKatz index)、転倒リスク(Timed Up and Go Test)などなどを評価してくれる。そしてその状況に応じて帰宅後のサービス環境を整える/斡旋してあげるというシステムを導入してみた。その結果は…?!というもの。

結果は、なかなかすごいものです…

対象となった患者はだいたい78-79歳程度の患者たち。移行ケア看護師が入ることで来院当日の入院が4.72~16.46%減少したとのこと。

帰宅させる分、場合によっては外来のフォローを入れるため、72時間以内の再受診は0.37-1.49%は増えました。…が、トータル1ヶ月以内の入院は1.38~13.82%減少しているという結果。

要は、

移行ケア看護師が入ってくれることで、

①ERなどの外来再来の頻度は増えるかもですが、

②入院を避けることができる

(結果、医療費も減らせそうだし、入院の弊害:高齢者のADL低下も最小限にできそう)

というのが本論文の趣旨です。

へー、ですよね。

なお、この移行ケア看護師は、これら都市部の大きな米国の病院でもマンパワーは不十分なのでしょう。

相談する基準も、

Mount Siai Medical CenterではISARが4点以上、

Northwestern Memorial HospitalではISARが3点以上と、

ISARの元法の2点よりもカットオフを高くしての相談となっています。

しかも、これらの看護師がいる日中の時間帯での相談だけに絞っての運用という病院もまじりながらでのこの結果です。

(もっと専門スタッフが増えて、24hになったら、もっと結果出る?!

まぁ、妄想の域ですが…)

「でも、日本に老年移行ケア看護師なんていないっしょ?!」

という方のご意見はごもっとも。

ただここからエッセンスを抽出すると

ここから言えることは、

①老年期ケアに明るい人の力を借りる

②どこがリスクになるかを評価して、サポート体制を強化してあげる

③必要ならばフォロー外来を厭わない

が重要そうです。

では次回以後、②の辺りをもう少し皆さんと深く掘り下げてみたいと思います。

日々是勉強!

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