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”プレホスの水漏れ”の箇所を探す①

昨日からの新シリーズ

プレホスにこそ独自のエビデンスとその配送ラインを!

~Prehospital Evidence Based Practice~

の導入編をお送りしています。

より多くの日本全国の救命士さんに届けたい!!

そんな熱いパトスをもって始めています。

皆さんお付き合いくださいませ。

さて、昨日は前提の前提:エビデンスパイプラインのお話をしました。

Glasziouが提唱した

診療のエビデンスから患者のもとに届くまでを油田からのパイプラインにたとえたもので、

どこで減衰(水漏れ)して届きづらくなるかを提唱した考え方です。

この水漏れポイントは7箇所あり、7つの”A”として紹介されています。

  1.  Aware 存在の認識

  2.  Accept 受け入れ

  3.  Applicable 適応がある

  4.  Available すぐに利用できる

  5.  Acted on 実際に行動に移す

  6.  Agree to 患者が同意

  7.  Adhered to 患者が遵守する

さて、今日はそれぞれどんな大穴がプレホスで空いているかを見ていきます。

プレホス教育現状問題点①:新しいエビデンスが出ても、その存在が認識されづらい

医学は日進月歩とよく言われますが、

まさにそのとおり。日々常識は変わっていきます。

特に病院前の現場(プレホスピタル)でのエビデンスは

病院内の診療(インホスピタル)のエビデンスと時にずれが出ることも。

そのため、プレホスは「プレホスのエビデンス」にアンテナを張っておく必要があります。

諸外国では便利なまとめサイト

そこにどんどんと新しいエビデンスが出ては更新されているのですが、

私が知る限り、日本語でそのようなサイトはありません。

あるいは、

最新のエビデンスを系統だって紹介するようなセッションはないように見受けます(心停止:CPAこそ多少ありますが…、間違っていたらご指摘ください)

もう少し具体的な事例を見て実感していただきましょう!

CPAでの末梢ライン確保について

どうやら初期波形によって重要度が違うようだというのは言われ始めています。

実際、2017年藤井らの論文(プロペンシティマッチをしたコホート研究)が

BMJ openに載って紹介されていますが、

院外CPAで初期波形が心室細動:VFでは、ルートを取る群が1ヶ月後の神経予後良好な生存率が逆に悪化したという結果でした(VF以外の波形ではその傾向はありませんでした) (BMJ open 2017; 7(12):e015055

もちろん、研究の質の問題で、まだ断定的なことは言えません(実際、上記のサイトでも”Neutral”とし、積極的な推奨も否定もしていません)が、VFでルートを取る時間があるなら、除細動しながら早期に搬送するという方が現実的には患者さんの神経予後まで考えた救命という意味ではよい可能性があります。(実際、私がオンラインMCではそのように指示するように心がけています)

高すぎるSpO2は害

今高すぎる酸素飽和度:SpO2は逆に害だと言われはじめています。

古典的には脳卒中の領域で、その後色々な領域で報告され、

”MONA”の初期治療で知られている急性冠症候群もSpO2低下ない限り、酸素投与は不要。

むしろ高流量酸素は死亡率を上げそうだというものも出ています(Systematic Review. Heart 2009; 95:198

救命士さん全員がご存知の内容か?…と言われれば、

おそらく答えはNOでしょう…

(もっとも、医師も知らずにSPO2 100%なのに漫然と酸素投与する事例をインホスでも散見しますが…)

他にもCPAでの上気道デバイスのこと、敗血症での点滴のことなど、新しいエビデンスが出て、実際に行動を変えるべき例は枚挙に暇がありません…(外傷などもそうですが、日本と諸外国のプレホスの処置の幅があまりに違うので、そこは今回あえて指摘しません)

「いやいや、救命士の活動はプロトコールが色々あって…」というお声が聞こえてきそうですね。そこはエビデンスパイプライン:4 Available すぐに利用できるの穴だと思っていますので、明日またお話しようと思います。

今日はエビデンスパイプラインの1つ目の穴に注目して

プレホス教育現状問題点①

新しいエビデンスが出ても、その存在が認識されづらい 

という問題点を指摘しました。

明日は、エビデンスパイプライン:4 Availableに準拠した穴を見てみようと思います。

日々是勉強!

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