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”プレホスの水漏れ”の箇所を探す②

新シリーズ

プレホスにこそ独自のエビデンスとその配送ラインを!

~Prehospital Evidence Based Practice~

の導入編をお送りしています。

より多くの日本全国の救命士さんに届けたい!!

そんな熱いパトスをもって始めています。

皆さんお付き合いくださいませ。

さて、先日、前提の前提:エビデンスパイプラインのお話をしました。

Glasziouが提唱した診療のエビデンスから患者のもとに届くまでを油田からのパイプラインにたとえたもので、

どこで減衰(水漏れ)して届きづらくなるかを提唱した考え方です。

この水漏れポイントは7箇所あり、7つの”A”として紹介されています。

  1.  Aware 存在の認識

  2.  Accept 受け入れ

  3.  Applicable 適応がある

  4.  Available すぐに利用できる

  5.  Acted on 実際に行動に移す

  6.  Agree to 患者が同意

  7.  Adhered to 患者が遵守する

さて、今日もどんな穴がプレホスで空いているかを見ていきます。

プレホス教育現状問題点②:エビデンスが出ても、利用ができない

ここは、日本の法で定められているので、如何ともしがたいものですが、

救命士含めた消防隊員がされる救急救命処置は、明確に定められています。

wikipediaによれば

救急救命処置とは、

「その症状が著しく悪化するおそれがあり、又はその生命が危険な状態にある傷病者(以下「重度傷病者」という。)が病院又は診療所に搬送されるまでの間に、当該重度傷病者に対して行われる気道の確保、心拍の回復その他の処置であって、当該重度傷病者の症状の著しい悪化を防止し、又はその生命の危険を回避するために緊急に必要なもの」(救急救命士法第2条第1項)

救急救命処置は、保健師助産師看護師法(保助看法)によって規定されている看護師(准看護師)の独占業務である「診療の補助」にあたる(すなわち、看護師以外の者が「診療の補助」を業としてはならない)が、救急救命士法第43条で「保健師助産師看護師法の規定にかかわらず診療の補助として救急救命処置を行うことを業とすることができる」と定められている。これは、法律によって一定の条件下において看護師の診療の補助業務の独占を一部解除することによって、他の医療資格であっても保助看法の規定にかかわらず診療の補助の一部を業とすることができるもの

…のこと。

ちなみに救急救命処置とは具体的にいうと…

聴診器の使用による心音・呼吸音の聴取・ 血圧計の使用による血圧の測定・ 心電計の使用による心拍動の観察及び心電図伝送などを皮切りに、他にも精神科領域の処置・小児科領域の処置・産婦人科領域の処置(墜落産時の処置…臍帯処置(臍帯結紮・切断)、胎盤処理、新生児の蘇生(口腔内吸引、酸素投与、保温)など) ・自己注射が可能なエピネフリン製剤によるエピネフリンの投与・ 鉗子・吸引器による咽頭・声門上部の異物の除去などなど

(一部のドクターには、へーって感じかもしれません)

そして、さらに救急救命処置野中でも、

より高度なものは「特定行為」という名で制限がされています

この 特定行為を行う際にはオンラインメディカルコントロールにより、医師の具体的な指示を受けなければなりません(救急救命士法第44条)

そして特定行為に及ぶまでの過程はそれぞれの地域でメディカルコントロールという団体によってプロトコール化されているのが一般的です。

(詳しくはこちらで紹介されています)

さて、この特定行為のプロトコールに注目してみましょう。

例えば、低血糖症例とブドウ糖投与のプロトコールの場合、

とある地域のプロトコールではこうなっています。

血糖測定は以下の2つを満たす場合

・JCS≧Ⅱ-10以上の意識障害

・血糖測定で搬送先選定等に利益がある場合

ブドウ糖投与は以下の2つを満たす場合

・血糖値<50

・15歳以上

逆にいえば、JCSⅠ-3などでは血糖測定はしていはいけないし

血糖:50mg/dlではブドウ糖投与してはいけない

というプロトコールです。

これ、インホスの感覚からすると、「え?」って感じですよね。

Ⅱ-10以下のちょっと変という人が低血糖ということもよくあるし、

血糖:50代でブドウ糖投与してよくなる例もあるからです。

ブドウ糖投与がリスクが高い投薬なら、判断基準に慎重になるのも致し方ありませんが、ブドウ糖投与は対してリスクはないのは言うまでもありません。実際、研修医向けのあんちょこ本には「よくわからない意識障害ですぐに血糖などの検査できなければ、昏睡カクテルとして酸素投与+ブドウ糖+ビタミンB1投与せよ」と書いてあるくらいです。

強いて言えば50%ブドウ糖の場合、血管外漏出が問題になりえますが、そんなこといったら、心停止時に使用するアドレナリンの点滴が血管外漏出する方がよっぽど問題です。

さらに行きます。

このとある地域のプロトコールでは、血糖測定は「指で行うように」と明確に指定されています。

…が、以前もこのブログで紹介したように

血糖測定は昔から耳朶でも測れます。特に耳朶は患者の痛みは少ないとのこと(BMJ 2000;321:20)。

さらに器具の進歩により測定器具の種類によっては前腕や手掌で測定することもできる時代になりました (Diabetes Care. 2005;28:708)

…が、こういった器具の進歩があるにもかかわらず、プロトコールで「血糖測定は指」とされていると、それ以外で血糖測定を救命士がした場合は、「プロトコール違反」として糾弾されてしまいます(少なくとも”ある”地域では)

法の観点から救命士は特定行為ではプロトコール遵守しないといけない

でも、自分が勉強した最新の内容とはずれている

みたいなジレンマが現場ではあるあるなわけです。

このジレンマ解消にはプロトコールをこまめに変更するべきなわけですが、

東京や湘南地域などのすごくアクティビティの高い地域を除いて、

それができている地域がおそらくかなり少ない…。

プレホス教育現状問題点②:エビデンスが出ても、利用ができない

古いプロトコールにしばられるせいで、救命士が最新の内容で現場活動ができない

現場の救命士の声を代弁するつもりで、今日は現状の一部をご紹介しました。

次回以後もプレホスの「穴」を皆さんで共有しつつ

「じゃあ、どうするの?」という核心にだんだん触れていきます。

お楽しみにー。

日々是勉強!

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