top of page

アルゴリズム法は本当に使いやすい?

新シリーズ

プレホスにこそ独自のエビデンスとその配送ラインを!

~Prehospital Evidence Based Practice~

の導入編をお送りしています。

より多くの日本全国の救命士さんに届けたい!!

そんな熱いパトスをもって始めています。

Glasziouが提唱した診療のエビデンスから患者のもとに届くまでを油田からのパイプラインのたとえをご紹介しています。水漏れポイントは7箇所:7つの”A”があり…

  1.  Aware 存在の認識

  2.  Accept 受け入れ

  3.  Applicable 適応がある

  4.  Available すぐに利用できる

  5.  Acted on 実際に行動に移す

  6.  Agree to 患者が同意

  7.  Adhered to 患者が遵守する

…というお話でした。

4.Available すぐに利用できる に関連した

プレホス教育現状問題点②:エビデンスが出ても、利用ができない

プロトコールが古いままという地域が少なくない

という事実をお伝えしました。

今日はプレホス教育現状問題点②’として

プロトコールについてもう少し考えてみたいと思います。

プレホスでの救命士の活動を規定するプロトコールの多くがアルゴリズム+大量の言葉で補足されています。

アルゴリズム法は現場で使いやすい形か?答えはNO!

実は私が医師4-5年目あたりからずっと感じていた疑問なのですが、

「アルゴリズム法ってそんなに便利か?」

という少し根本的な問を立ててみます。

…というのは、多くの医師がこのプロトコールはアルゴリズムと大量の文字で作らねばならないというバイアスに囚われていると思うからです

(私が知る限り、日本でこのバイアスを壊したプロトコールはありません)

アルゴリズム法をWikipediaで紐解いてみると、

以下のように表現されています。

”アルゴリズム(英: algorithm [ˈælgəˌrɪðəm])とは、

数学、コンピューティング、言語学、あるいは関連する分野において、問題を解くための手順を定式化した形で表現したものを言う。算法と訳されることもある。「問題」はその「解」を持っているが、アルゴリズムは正しくその解を得るための具体的手順および根拠を与える。さらに多くの場合において効率性が重要となる。”

(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AB%E3%82%B4%E3%83%AA%E3%82%BA%E3%83%A0より引用)

簡単にまとめると、

Wikipediaであるように、アルゴリズム法の前提は

①「解くべき問題」は「明確な解」を持っていること。

②その明確な解が「すべてわかっている」(もれなく・だぶりなく”MECE”に数え上げられている)

③解へのアプローチは分岐にて「明確な選択」を繰り返すこと

です。

ただ、考えてみてください。

救命士さんたち(も

っといえば、医療者全体)が戦っている生身の患者さんの状態(=解くべき問題)は、常に今の医学で「明確な解」をもっているでしょうか?明確な解がすべてもれなく数え上げられているでしょうか?選択をする際にそんなにクリアカットにいくでしょうか?

まぁ、もし上記の前提が成り立つなら先進的な諸外国でコンピュータが救命士に既に取って代わられているでしょう。

さらに行きます。

コンピューターと人間の思考過程は同じでしょうか?

人間の判断の方法にはシステム1:直感とシステム2:論理的があるとする仮説:Dual process theoryが、現在心理学・脳科学の分野では一般的です

https://pbs.twimg.com/media/DhlejXDU8AArQr6.jpg:smallより引用

(システム1?2?という人はこちら

システム2の思考過程は確かに精緻(な傾向にある)ですが、

注意力を多分に必要とし、時間がかかり、「疲れる」という特性をもちます。

救命士たちの壮絶な現場、場合によっては焦る・緊張するという場面も多々あるでしょう。そんな場面でアルゴリズム法のようなシステム2の思考過程を踏めるでしょうか?

ちなみに私は普段総合内科の仕事で「よくわからない症状の人の診断」もしているので、この思考法:システム1とシステム2は意識して使い分けています。

普段の救急外来やちょっとした内科外来では完全にシステム1:直感でのスタイルを取っています。(そうでなければ現場は回りません)

すぐに診断がつかない時はシステム2に切り替えて、時間はかかるが確実な思考法で思考していきます。

色々お話しましたが、

アルゴリズム法がプレホスの現場で使いやすい形か?答えはNO!

というのが私の中の結論です。

使いやすい形になっていない。

それは、エビデンスパイプラインでいうならば、

4.Available すぐに利用できる   の部分に

「アルゴリズムという使いづらい形」という穴が空いているのではないか?

という問題提起をさせていただきました。

(「で、どうするの?」というご意見が出てきそうですね。それはもう少し先でお話しようかと思っています。しばしお待ち下さい)

プレホス独自のエビデンス・教育環境確立を願って。

日々是勉強!

bottom of page