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廃れたものには、理由がある。ショックパンツを回顧する

新シリーズ

プレホスにこそ独自のエビデンスとその配送ラインを!

~Prehospital Evidence Based Practice~

をお送りしています。

さて、今週はいよいよ本格的に

他との差別化を図った内容を展開していきますよー。

今日は管理人SSが試しに作った

フィギュア!1発!…の解説を…と思ったのですが、

一部の方から「ちらっと出てきた、ショックパンツって何?」というご質問を

いただきましたので、今日は私の勉強も兼ねてお伝えします。

結論から申し上げると、

昔流行った、でも、今は「逆に有害かも」と言われ

滅多なことでは使われなくなったものです。

写真はこんな感じ。

( https://www.kohkenmed.co.jp/products/kom310/より引用)

このショックパンツ(英語では “military antishock trouser”:MASTの愛称で知られる)の歴史は実は古く、1903年とのこと(Crile GW: Blood-pressure in surgery. In: An experimental and clinical research. Lippincott, Philadelphia,1903,p288-91.)

その後に、第二次世界大戦から重力をこえる力がかかる戦闘機のパイロットの失神防止に使用され(いわゆる耐Gスーツ)、その後はベトナム戦争での外傷性出血に対して使われるようになったとのこと (日救急 医会誌 1999; 10: 667-76)

戦争、外傷治療の発展ともにショックパンツも発達したんですね。

ちなみに、このショックパンツは欧米では1970-1990年代、日本でも1980-2000年初期くらいまでは、頻回に使用されていたようです。その証拠に平成6-8年は1027件の使用報告です( 消防庁:消防白書 平成7-9年度版.東京,大蔵省 印刷局, 1995-7)。ちなみに現在は100件未満です。

それもそのはずで、否定的なEvidenceが1990-2000年前後で複数出たためです。

その代表的なものに

真弓らが1999年にメタ解析があります(日救急 医会誌 1999; 10: 667-76)。

要は今までのショックパンツの論文を集めて、合体させ、「で、結局有用なの?どうなの?」というのを結論を出してくれたというわけです。

(論文の集め方や統合の仕方などに本当は議論があるところなのでしょうが、ここでは割愛します)

さて、これをみると、面白いことに

「ショックパンツが有効だった1例」みたいなケースレポートはあまたありますが、ちゃんと複数を集めて研究したものは極めて限られているのが現状です(比較対象研究4件、RCT2件)

これらを統合した結果を見ると、死亡率はショックパンツを使用してもしなくても差はなく、搬送時間が長いグループなどの限ってみても死亡率に差は出なかった…とのこと

むしろ有害な経過だったという報告は小さいレベルでの報告は複数あり、

基礎の知見で、代謝性アシドーシスの悪化( Journal of the American College of Emergency Physicians 8.5 (1979): 184-187.)の他

ケースレポートで足に外傷がないのにコンパートメント症候群を起こす( Annals of emergency medicine 12.6 (1983): 382-384.)

なども。

そのため、2018年のNEJM(世界最高の医学雑誌)では 

”有益でないばかりか、潜在的に有害な可能性すらある”(N Engl J Med 379.4 (2018): 387-388.)とかかれる始末…

…というわけで、私はショックパンツを見たこともありません

…し、使ってもらおうと思ったこともありません。

(ベテラン救命士の話を聞くに、履かせるのも、脱がすのも大変なよう…)

脱線でしたが、

今日は一部の方からご質問いただいたショックパンツ

についてお話しました。

廃れたものには理由がある。

プレホスの処置1つ1つにエビデンスを。

そしてプレホス独自のエビデンスが

プレホスにて使いやすいシステムができるよう願って

日々是勉強!

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