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SS流フィギュア!1発!ショック編を解説する③

プレホスにこそ独自のエビデンスとその配送ラインを!

~Prehospital Evidence Based Practice~

をお送りしています。

他とは違う救命士のための勉強資料を先日提示し、

その根拠をちょっとずつ解説しています。

今日は③の下肢挙上をお話しますが…

今日のポイントは3つです!

A:実施するのは”頭を意図的に下げて”下肢を上げる:Trendelenburg体位ではなく、やるならば「下肢だけをあげる:Passive leg raise」

B:下肢挙上で”変化するのは心拍出量”であり、必ずしも血圧が上昇するわけではない

C:うっ血の際には、下肢挙上は潜在的に有害になりうる

です

A:実施するのは”頭を意図的に下げて”下肢を上げる:Trendelenburg体位ではなく、やるならば「下肢だけをあげる:Passive leg raise」

こんな研究があります。

正常体液量、または臨床的に体液減少と考えられる患者にTrendelenburg体位または受動的脚挙上(Passive Leg Raise:PLR)の効果を検証した1960-2010年の過去の研究を集めて検証したところ…

Trendelenburg:頭を下げて1分で心拍出量は9%(0.35L/min増加)した。しかし、2-10分でベースラインの仰臥位よりもむしろ心拍出量が4%落ちる。

下肢挙上で1分で心拍出量6%(0.19L/min)増加した。その後も効果は継続

(J Clin Anesth. 2012 Dec;24(8):668)

これを踏まえるとやるならTrendelenburg体位ではなく、下肢挙上かなという気になりますよね。

B:下肢挙上で”変化するのは心拍出量”であり、必ずしも血圧が上昇するわけではない

もうお気づきの人も多いと思いますが、上記の文献で言及されているのは、心拍出量であり、血圧ではありません。実際、下肢挙上では必ずしも血圧が上昇しないことは知られています。(Crit Care Med. 2016 May; 44(5):981)

ただ、ショックは、十分な末梢循環が保てず、組織内低酸素になってしまう状態であり、

(仮に見た目の血圧が上がらなくても)心拍出量増加は末梢循環の改善する方向に理論上寄与します。また、大きな有害事象もありません。そのため、(仮に見た目の血圧上昇がなくても)下肢挙上は行うことが無難かと思われます。

(さらに正確に言えば、インホスでは下肢挙上で本当に心拍出量が増えるかを心エコーやAラインなどみて、有効かを判断します。…が、プレホスではできないので、やり続けるのが無難かと)

C:うっ血の際には、下肢挙上は潜在的に有害になりうる

これは下肢挙上ではなく、Trendelenburg体位のデータですが、

Trendelenburg体位は心臓に負荷をかける可能性は指摘されています

(心臓外術後で陽圧換気している脱水患者12人を対象に30°Trendelenburg体位をしたところ、前負荷増え、左室拡張末期圧は著明に増える。

(Eur J Anaesthesiol. 2003;20:17)

下肢挙上での心臓への負担のデータは調べる範囲で見つからなかったので、厳密なところは不明です。が、理屈の上では下肢挙上も負担をかけるため、避けておくほうが無難とは考えられます。(特に心原性ショックの場合、呼吸が悪いことも多いので、肺の機能をサポートする意味で少しだけ頭を上げたいですしね…)

ちなみにイメージとしては、心原性ショックは、心臓のポンプ機能が落ちているため、”血液の流れに渋滞が起こっている”こと生じるショックです。循環する血液量が増え過ぎれば余計に渋滞が生じてしまい、病態が悪化する懸念がある…という感じです。

その意味で、同じくうまく循環しないで「渋滞がおこる」タイプのショックに閉塞性ショックがあります。閉塞性ショックでのTrendelenburgや下肢挙上の直接のデータはありませんが、同様の類推で、閉塞性ショックでも下肢挙上は避けるほうが無難かとは思われます。

そして、心原性ショックや閉塞性ショックは頸静脈が怒張するのが一般的です。なので、怒張しているショックでは下肢挙上避ける、逆に頸静脈が目立たない場合には挙上するというようにフィギュアでは表現しました。

明日は補液量のところをコメントします

プレホス独自のエビデンス確立・普及を願って…

日々是勉強!

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