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解説:低体温と敗血症

皆さん、こんにちは。

救命士さんをターゲットに、

(一部若手医師やER看護師も視野に)

プレホスにこそ独自のエビデンスとその配送ラインを!

~Prehospital Evidence Based Practice~

ということでお送りしています。このシリーズ。

プレホス×敗血症

を数回にわけてお送りしています。

さて、昨日「低体温の敗血症こそ、見逃さずにプレホスの段階から輸液したいね」

というご紹介をしました。

一部のプレホスの方から「”低体温”で敗血症というイメージはなかった」とのご意見いただきました。ご意見ありがとうございます。今後もどんどんご質問/ご意見くださいね。

…ということで、今日は少し敗血症と低体温のことを深堀り解説します。

低体温の鑑別は実は多い

低体温。UpToDate(…という医者向けの疾患まとめ英語サイト)をみてみると

低体温の鑑別は実は多岐に渡ります。

①熱の喪失:特に外気温の影響(冬の寒い時期に…というやつです。管理人SSは以前長野県にいましたが、冬に山程きましたよね、低体温…)はみなさんイメージが湧きやすいと思います。実は熱の喪失というパターンだけでも血管拡張が原因で、一部の薬やアルコール、あるいはバリアする皮膚のトラブルとして熱傷などが知られています。

他にも…

②熱産生機能低下で、内分泌疾患:甲状腺機能低下・副腎不全、燃料枯渇として低栄養、神経筋機能の低下として高齢者や乳児などがあったり、

③調節機能(≒神経)の破綻:ニューロパチー、パーキンソン病…などなど

そして、UpToDateでは

④その他の機序として敗血症の名が記載されています

「その他」では終わらせない…

「その他ってなんじゃい?!」というツッコミがきそうなので、深めます。

敗血症の低体温の機序は一般的に複数とされ、血管拡張による熱の喪失+熱産生低下の機序が関与するとされています(Intensivist 2009;1:304)

 敗血症では、各種のサイトカインで血管が強制的に拡張します。敗血症初期の段階では交感神経が緊張するため、血管は収縮しようとするため(=サイトカインの血管拡張に抗う方向)、それなりの血圧も保て、体温も低下しないことが通常です(発熱そのものはサイトカインにより視床下部が反応して起こるものです)。しかし、これがこじれると、血管拡張が悪化し、結果、血管からの熱放散が高まり、低体温へ。加えて、重症な敗血症性ショックは挿管などのためにインホスでは鎮静せざるをえないこともままありますが、その際には、交感神経が抑制されるため、僅かに残っていた血管収縮が減弱してしまい、さらに低体温になることもしばしば。。

 また、熱産生低下≒発熱する元気すらないですが、燃料枯渇の要素や神経筋機能が不十分の状態にあてはまるのでしょう。実際、高齢者の敗血症で低体温はとてもよく経験します。

…と、ざっくりいえば、

敗血症での低体温は「こじれだしている」「もともと虚弱な患者の状態」などを意味するため予後が悪いんですね。

実際、

低体温の敗血症は、敗血症全体と比べてショックが多い(94% v.s. 61%)死亡率が高い(62% v.s. 26%)(Crit Care Med 1992;20:1395)

をはじめとして、低体温の敗血症は死亡率高いよという報告は枚挙に暇がありません。

どうでしょ?敗血症は低体温こそ早期に見つけて対応しないとまずいなと

実感していただけたでしょうか?

日々是勉強!

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