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アナフィラキシー判断、それでも陥るピットフォール

救命士さんをターゲットに、

(一部若手医師やER看護師も視野に)

プレホスにこそ独自のエビデンスとその配送ラインを!

~Prehospital Evidence Based Practice~

ということでお送りしています。このシリーズ。

昨日からアナフィラキシー×プレホスでお送りしています。

昨日はアナフィラキシーの診断基準のお話をしました

①アナフィラキシーの臨床経過はめちゃバリエーションあり!:基本は蕁麻疹+ABCDだが、ほかのバリエーションもあり

②バリエーション豊富さゆえ、上記の診断基準ですら100%ではない。「何かに暴露し」「突然の症状でつらそう」ならアナフィラキシーとして対応せよ!

でしたね。

さて今日は「アナフィラキシー判断、それでも陥るピットフォール」

と題してお送りします。

ピットフォール①血圧保たれていると

「アナフィラキシーじゃない」と誤解

最もよくあるピットフォールです。若手医師のプレゼンで「血圧下がっていないのでアナフィラキシーショックの一歩手前でした」というプレゼンはよく聞きます。一歩手前って、つまりどういうこと?!みたいなツッコミを毎回入れています。個人的には「アナフィラキシーショック」という言葉が誤解の元と思っています。ショックとアナフィラキシーがセットみたいな語感ですものね。なので、個人的には「アナフィラキシーショック」という言葉は大嫌いで、若手医師にも「アナフィラキシーショックといわず、アナフィラキシーと言いなさい」と指導しています。

もちろん、この「血圧保たれている」アナフィラキシーも放っておけば、さらに最終的には血圧下がるケースも多いのでしょう。ただ、それは厄介です。…というのも、血圧下がる前の早期のアナフィラキシーでないと治療が難渋するケースがありうるからです。実際、血圧崩れていないアナフィラキシーにアドレナリン(=エピネフリン)の筋注をすることで、入院中の低血圧進行のリスクが下がる(OR 0.254)という観察研究もあるくらいです(Sci Rep 2016; 6: 20168)

ピットフォール②SpO2保たれているから

「アナフィラキシーじゃない」と誤解

ABCの異常のうち、Bの異常をどうとらえるか?という意味での誤解・ピットフォールです。

上記の血圧・循環の関係のように、もちろんSpO2が乱れている=呼吸に問題ありそうはおっしゃるとおりです。

ただ先述の通り、アナフィラキシーを如何に早期に診断してアドレナリンを筋注するかふぁアナフィラキシー診療の核心といえます。SpO2下がるまで待っては遅いという意味です。

UpToDate(医者のための病気まとめサイト)では呼吸の症状として、呼吸苦や胸苦しさ、咳嗽や喘鳴が突然出ることも「呼吸の異常」として「アナフィラキシーの症状」として対応せよと記載されています

( https://www.uptodate.com/contents/image?imageKey=ALLRG%2F66333&topicKey=ALLRG%2F106778&search=%E3%82%A2%E3%83%8A%E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%A9%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%83%BC&rank=1~150&source=see_link)

ピットフォール③喘鳴が目立つと「喘息」と誤解する

上述のとおり、アナフィラキシーはB:呼吸の異常が出うるわけですが、その中でも喘鳴が目立つケースがあります。

喘鳴があると「喘息だー」と飛びついてしまうのもよくあるピットフォールです(プレホスでも、インホスでも時に見かけますね、この現象…)

よく観察すれば、皮疹が出ていたり、喉が変などのAirwayの症状も出始めているのですが、気づけない

(人間の認知の問題・バイアスの問題をはらんでいます。ここでは詳細は割愛しますが、早期閉鎖という問題です)

喘鳴を見た時に「本当に喘息?」「アナフィラキシーはじめ、他の疾患じゃない?(心不全・COPDなど)」と疑えるかが大事ですね

ピットフォール④皮膚症状が目立たないと

「アナフィラキシーじゃない」と誤解

昨日もお話したとおり、アナフィラキシー診断の基本軸は「蕁麻疹+ABCDいずれかの異常」です。

それは蕁麻疹などの皮膚症状の出現割合が高いからなのですが、どうやら決して皮膚症状は100%の出現率ではないようです。

20%ほど皮疹症状は出ない、または目立たず見通されるとされています。

その中でもよくあるピットフォールが「もともと抗ヒスタミン薬=アレルギー薬」を内服しているです。こうなると、症状の出方がより非典型的で皮疹が目立たないというケースがありえるとされています。

加えて、手術中のアナフィラキシー(手術では麻酔はじめ複数の薬をいろいろ使うので、当然アナフィラキシーは起こりえます)は、本人は麻酔がかかって「かゆい」などは訴えられず、手術部位以外は全身に布がかかっているため直接観察しづらい状況なので観察しづらい、見落とされやすいということもあるようです( J Allergy Clin Immunol. 2006;117(2):367.)

いかがだったでしょう。

よくあるアナフィラキシーの誤解、ピットフォールを誤解しました。

個人的にはこれはプレホスでの誤解もそこそこですが、医師:特に中堅以上の医師に誤解が多いような実感です。

頻度の比較的ある疾患:アナフィラキシーだからこそ、改めて勉強し直したいものですね。

明日は「アナフィラキシーは”スピード感”がめちゃ大事」というお話にしようかと思ってます

日々是勉強!

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