ボスミンは大腿外側、これ大事!
救命士さんをターゲットに、
(一部若手医師やER看護師も視野に)
プレホスにこそ独自のエビデンスとその配送ラインを!
~Prehospital Evidence Based Practice~
ということでお送りしています。このシリーズ。
アナフィラキシー×プレホスでお送りしています。
さて、最初にお知らせです。
9月:2019年度の下半期に入り、このブログも少し様変わりします。
具体的には、今まで平日毎日更新でしたが、
今後は「月」「木」の週2回更新にしてみようと思います。
その分、1回あたりの内容を深めたり、皆さんからのご質問のトピックに
よりタイムリーに対応しようかと思ってます。
是非、今後も引き続きこのブログをご笑覧くださいな。
さてさて、話をもとに戻して…
今日は「アナフィラキシーのボスミン筋注、大腿外側の1択ですょ」です。
たぶんプレホスの人は当たり前。
むしろインホスの人が、「え?そうなの?」という人がいそうな話題ですね。
プレホスではエピペンしか使用できない=添付文書通りに!
プレホスの方がアナフィラキシーでボスミン筋注する場合、
患者さんが「エピペンを医師から処方されているケース」に限ります。
さて、そのエピペンは
その添付文書に「大腿外側に速やかに」と明記されており、
他の打つ場所が一切記載されていないからです。
(蛇足ですが、エピペンの使い方はこちら。
処方するのに実際にエピペンを使えない若手医師をちょいちょいみかけます…。安全キャップ外さないといけないんでしたよね。)
大腿外側はスピードが段違い!
この話をインホス;特に医師や中堅以上の看護師にすると
「え?!上腕じゃだめなんですか?筋注なんですよね?」
というリアクションがだいたい返ってきます。
確かにおっしゃるとおり、
筋注=筋肉注射の場所としては大腿(筋肉でいうと大腿四頭筋)はもちろん、
上腕(筋肉でいうと三角筋)もそうですし、
もっといえば臀部でも打つことは可能です。
(こちらのサイトに看護師さん向けにわかりやすく解説されています)
さてさて、
たしかに筋肉注射全般でいうと、上腕も確かに打つことは可能なのですが、
こと「アナフィラキシーに限っては」大腿外側の一択です!!
(…ってしつこい?!)
(昔の日本の教科書をみると、たしかに上腕の記載があるものもあるのですが、最近はどれも大腿外側のみに修正されているように思います)
それは上記の通り、ボスミン(=アドレナリン、エピネフリン)の血中濃度があがるスピードが「段違いのため」です。
具体的にはJ Allergy Clin Immunol 2001;108:871に有名な論文が出ています。
このグラフの(T)は大腿外側、(A)は上腕を、IMは筋注、SCは皮下注射を意味します。縦軸は血液中のボスミン(=アドレナリン、エピネフリン)の濃度、横軸は注射をしてからの時間です。
どうでしょう。T:大腿外側に筋注しているものは、注射後数分から10分以内にしっかり血中ボスミンの濃度があがっています。一方、上腕では筋注も皮下注ももちろん、血中濃度がすぐにあがっていないのは見ておわかりだと思います。
以前にもお話をしましたが、
アナフィラキシーの治療では「いかに速やかにボスミンを体内で効かせるか」が腕の見せどころです。
その意味で「大腿外側の筋注、1択!」というのはご納得いただけたでしょうか?
なお、この違いは筋肉の発達具合・血流量の差と言われています。
(ちなみに蛇足ですが、そのため重症の喘息でもボスミンを皮下注射/筋注が日本の教科書では書いてありますが、このケースでも個人的には大腿外側に筋注しています。しっかり早く効かせるためです)
まとめます。
ボスミン筋注の場所はエピペンの記載どおり、大腿外側の1択!それはボスミンの血中濃度が段違いのため!!
ね、たかがアナフィラキシー…と思いきや、奥が深いですね。
次回はアナフィラキシーの時の姿勢の話をしつつ、そろそろ図解を目指します…
(…管理人SSの気分次第?!)
日々是勉強!