変な経過ではいつも心に薬を忘れず
救命士さんをターゲットに、
(一部若手医師やER看護師も視野に)
プレホスにこそ独自のエビデンスとその配送ラインを!
~Prehospital Evidence Based Practice~
ということでお送りしています。このシリーズ。
2019年下半期からは月木の週2(祝日除く)の更新、
月曜日が祝日だとちょっと間があきますな。。
まぁ、一度決めたので、しばらくはこの頻度で更新していきます。
さてさて、今日は先日ご紹介した図解の一部補足「内服薬の確認」です。
これは正直その薬の具体的な名前までは覚えなくて良いですが、
是非、お薬手帳(や、それに準じたもの)は必ず持ってきてほしいですし、
搬送途中にバイタルがさらに悪化したときの病院への第2報では
お薬情報を読み上げてくれるとすごく助かります。
いつも心に薬を忘れず
…というのは、アナフィラキシーにエピペンを打てば、
通常多少は改善傾向になるはず…ですが、よくならないのはなにか変です。
このときの医者の思考過程は
①エピペンの薬効(通常処方から1-2年で切れます)が切れていた?(から体内に届いていない)
②エピペンがちゃんと打てていなかった?(から体内に届いていない)
③エピペンの効果を邪魔するものがある(から体内で効かない)
④アレルゲンに今も暴露されている(からエピペンの効果以上にアナフィラキシー悪化要因が大きい)
⑤超重症のアナフィラキシー(からエピペンの効果以上にアナフィラキシー悪化する)
⑥そもそもアナフィラキシーではない(からエピペン打っても効果ない)
などなどを一般的には考えていきます。(考えていないという医師諸君は)
④ならすぐにアレルゲンと患者を切り離しつつ
①②④⑤なら院内で使えるエピペンの代わり:アドレナリン(ボスミン ®)をルートが取れていない状況なら5-15分毎に筋注を繰り返す、ルートが取れているなら少量持続投与をやったりします。
ただそんなときでも、ちょっと対応が代わり得るのが③エピペンの効果を邪魔するものがある です。
具体的にはβ遮断薬という心臓や血圧の薬を飲んでいる(+ACE阻害薬が入っていると余計に治療に難渋しやすい)ということが知られています(J Allergy Clin Immunol. 2015;135:491)
その際にはグルカゴンという別の薬を使うことが一般的です( Emerg Med J. 2005;22:272. )そして多くの場合、ERにルーティーンに置いてある薬ではない?!ので、薬局からとってくるなどの準備が必要な施設が多いという現実があります。ERに普段ない薬をわざわざ使うということを考えると、医師サイドとしては、事前に「使うかも」とわかっていて準備できていると大変助かるという次第です。
なので、エピペン打っても5分で改善傾向がない時には、治療に工夫が必要な可能性があり、第2報しつつ、その際に薬の情報があると大変助かるなーというのがERに立つ医者の本音です
(なお、β遮断薬飲んでいても、アドレナリン筋注1回で効くケースは多く、従来言われているよりもそんなに気にしなくて良いかも( J Allergy Clin Immunol Pract. 2018;6:1553)みたいな報告は一応あります。一方で、β遮断薬で難渋するケースが「一部にある」のもまた事実なので、医者としては「頭の片隅にはおいておく」みたいなイメージです)
今日の標語!
エピペンのみで満足するな!バイタルチェック+薬の確認!
日々是勉強!