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悩ましい「低血糖脳症」知るべし!

救命士さんをターゲットに、

(一部若手医師やER看護師も視野に)

プレホスにこそ独自のエビデンスとその配送ラインを!

~Prehospital Evidence Based Practice~

ということでお送りしています。このシリーズ。

前回から新シリーズ:血糖測定・低血糖をはじめます。

「糖だけに、低血糖を舐めてる医療関係者が多い!?」という危惧を払拭するために、

数回に渡ってお送りするこのシリーズww

今日は「低血糖脳症関連」についてお伝えします。

低血糖は放置すると予後不良で後遺症を…

救命士のみなさんは低血糖脳症という疾患を知っていますか?

重度の低血糖が長時間続くと、脳に器質的なダメージが残り(脳症)

場合によっては後遺症や、死亡例も多いという疾患なんです。

低血糖脳症の厳密な機序は不明ですが、脳のエネルギーである糖の枯渇に伴い、代謝エネルギーが低下、Na-K ポンプという細胞が生きるために必要な細胞膜にあるポンプが機能不全となり、 細胞内水腫を来すとされています。加えて、その後の補正としてブドウ糖を大量に投与すると、大幅な血糖値の変化で再灌流障害が生じ、さらにダメージを与える可能性…なども言われているようです( Diabetes Res Clin Pract. 2013;101:159)

そしてこの脳症の重度は低血糖の程度が強い(平均値26mg/dL)、

低血糖の時間(数時間)に相関するとされています(J Neurol 2012;259:2172)

低血糖脳症は悩ましい

この低血糖脳症は3つの意味で医者にとって悩ましいと私は考えています

①診断が除外診断

②その予後が治療開始時には全く読めない

③根本的治療法がない

①診断ですが、臨床的には「低血糖をぶどう糖で治療し血糖値は回復したのに、意識レベルが回復しない&他疾患の除外」で診断をします。(J Neurol 2012;259:2172)

この他疾患を除外というのがネックで、

実際に他の疾患があるのに、「低血糖で来院して、意識レベルが回復しないから低血糖脳症だ」と決め打ちすると極めて危ないんです

(前回もお話したように、重症低血糖の4割程度は敗血症や臓器不全などの重篤な疾患の結果でしたね)

若手Drがそれで危なく…という現場を実際に複数回目撃しています。

②低血糖脳症は、ほぼ後遺症なく治るケース(mRS:0-1)と、多大な後遺症~死亡するケース(mRS:5~)と両極端に分かれることで知られています。

(J Neurol 2012;259:2172)

これを診断当初に予測できればよいのですが、なかなかできません。

先述のとおり、より低血糖の程度が強く、ながい時間低血糖であれば、

後遺症は残しやすいという傾向はあるのはわかっていますが、

それを完全に予測できないという状況です。

発症当初のMRIも必ずしも予後と関連しないようです…。

③そして根本的に治療がないということも悩ましい…

蘇生後脳症と同様に低体温はどうやらよさそうですが(Diabetes Res Clin Pract. 2013;101:159)

逆にいえばそれくらいで、大した治療がないのが現状です。

低血糖は頻度の多い症候で、時に大きな合併症に発展する。

しかしその合併症:低血糖脳症は色々悩ましい…というのをお伝えしました。

今後低血糖脳症の病態理解・治療の研究が進むことに期待しつつも

一方で、現場の私達は「合併症に至らないように低血糖について患者に教育/ 救命士らの早期の治療」がひとまずすぐにやれることかなって感じです。

今日の標語

低血糖脳症は悩ましい、そもそもさせないために早期治療

いかがだったでしょうか?

次回も低血糖あれこれで救命士(や若手医師)に役立ちそうなお話をお伝えします

日々是勉強!

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