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発災72時間後を見越してERでの注意点

本来なら月・木の平日週2回更新しているこのブログ。

祝日の際にはブログ更新はお休みするのですが、

やはり大きく爪痕を残した台風19号を鑑みて、

(&先週木曜日は単純に更新しわすれた)

今日は臨時でブログを更新します。

普段ならば

”救命士さんをターゲットに、

(一部若手医師やER看護師も視野に)

プレホスにこそ独自のエビデンスとその配送ラインを!”

と銘打ってブログを展開していますが、

今回は台風19号後の災害後のERでの忘れちゃいけないこと

を中心に研修医やER看護師に向けて情報を数回に分けて発信していきます。

さて、今日は、みなさんがすぐに使えるように…ということで

あえて先に気をつけるべきことのポイント、その概略をすべてご提示します。次回以後、なぜそのトピックが大事なのか、その重要箇所の詳細などを各論で語っていく…というスタイルにさせてください。

災害急性期でERで気をつけるべきBig3

一般的に災害は、生じた段階からの時間経過でニーズや実際の物資とのアンバランスが大きく変わっていきます。そのため、その段階/フェーズ毎に何を狙ってアプローチするかが大きく変わってくる。それが、災害医療です。

発災して数時間のフェーズ0、72時間以内のフェーズ1(いわゆる超急性期)と呼ばれる段階はDMATはじめ、その道のプロの人達に任せるとして

(ちなみに私もDMAT隊員ですが、勉強中の身です。Disaster medicineをちゃんと勉強しなきゃなぁと思っています、はい。)

多くの医療者が関わることが多いと予想される急性期=フェーズ2:発災から72時間~1週間程度のところに焦点をあてます

(おそらくブログの読者から想像するに、そこがニーズ高そうなので)

さて、災害急性期(72時間~1週間)でERで気をつけるべきBig3は以下のとおりです

①(災害で壊れたものの片付けに伴う)外傷

②(忘れがちな)感染症

③(ストレスやどうしても薬が手元になくて生じる)慢性疾患の急性増悪

特に①②は今回の台風のように「浸水」が生じると+α気をつけるべきところが増えるのがミソです。

(もちろん、細かいところをあげればさらに色々ありますが、まずは皆さんにわかりやすいように3つに絞りました)

外傷

多くは通常の外傷と同様ですが、特に意識すべきものとして

A:破傷風対策。基本的にほとんどの外傷で、22歳~51歳では破傷風トキソイド1回打つ(例外:最近打ったばかり)。52歳以上では3回打つのはほぼ必須。+強く破傷風発症のリスクを疑う傷ではグロブリンまで忘れずに

(参考資料としてこちら

+α:水に浸かりながら、長く作業する場合には、足のトラブル:Nonfreezing cold injury

足が水で白くふやけながら足先が冷たく感覚が落ちていて、歩くのもやっという状態で疑う。急な加温はその後の症状悪化のトラブルになるので、足を上げながら室温で加温していく+適宜鎮痛薬

(参考資料としてはこちら

感染症

A:感冒などの上気道感染、下痢はどこでも流行りやすい。

+α:浸水のトラブルの時

  ⅰ:蜂窩織炎では必ず、Aeromonasなどの特殊な菌を想定して治療を

(血培取りつつ、第3世代以後のセフェム+ニューキノロン系)

  ⅱ:浸水トラブルが5-7日ほどして、発熱・充血・黄疸・腎不全などで

  レプトスピラを忘れない

(保健所に連絡して全血と尿でPCR+血清で抗体検査。

全血なのがミソで普通の生化学のスピッツでは駄目

   =前もっての連絡を。

   治療はペニシリン系でもよいが、CTRXが無難)

慢性疾患の急性増悪

A:特に喘息や心不全が多い事が知られている

  → 奇しくも喘息や心不全は「喘鳴」の症状は似通っている。

    病歴+身体所見±UCG/肺エコーをうまく使って鑑別を

    + 薬がどれくらいあるか確認し、院内の在庫状況に合わせた処方を

以上、今回の台風後の連休明けERに来る(発災から72時間経過)患者層の最低限のトピックと知っておくべきところをざっくりまとめました。

(何度も言いますが、最低限で、かつ、忘れやすい所に焦点を当てています)

その詳細は次回の更新日以後、慌てず色々細々解説していきますね。

今日の標語

災害72時間以後のERで気をつけるべきBig3:①外傷 ②感染症 ③慢性疾患の急性増悪

特に破傷風+浸水時の特殊な疾患達を忘れずに

日々是勉強!

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