欧米の5-10倍?!破傷風!
普段なら”救命士さんをターゲットに、
(一部若手医師やER看護師も視野に)
プレホスにこそ独自のエビデンスとその配送ラインを!”
と銘打って月・木の平日週2回更新しているこのブログ。
先日の台風19号後の災害の影響を鑑みて、
臨時シリーズ:超急性期をすぎた災害後ER
と題して、
災害後(72時間経過した)ERでの忘れちゃいけないこと
を中心に研修医やER看護師に向けて情報を数回に分けて発信していきます。
さて、前回はざっくりとしたトピックをご紹介しました。
①(災害で壊れたものの片付けに伴う)外傷
②(忘れがちな)感染症
③(ストレスやどうしても薬が手元になくて生じる)慢性疾患の急性増悪
今回からはその各論をお話、
特に今日は破傷風についてやっていきます。
さて、この破傷風について
先日当診療グループを回っている研修医の先生と話をしたら
「そんなに破傷風って大事なんですか?」
「1回も打ったところ見たことありません」
「当直時に上級医に相談しても、破傷風ってめったにないから、打たなくてよいよと言われました」
(当院のERは外傷はあまり多くありませんが…)
「なぬ~!!!」と思い、筆を取る次第です。
破傷風は恐ろしい病気
当直/ERをする、外傷を見うる若手医師やER看護師に伝えたい。
「破傷風は恐ろしい病気ぞよ」
きれいな傷なのに””心配だから念の為、抗菌薬5日分”とか出すくらいなら、
よっぽど破傷風対策の方が理にかなっています。(…ちょっと言い過ぎた?!)
さて、どう恐ろしいかをお伝えしましょう。
世界的にみれば、死亡率45-55%の病気です
(Expert Rev. Anti Infect. Ther. 6(2018): 327–336)
日本だけに限ってみれば、6.8%というデータが2018年に出ています
(Journal of critical care 44 (2018): 388-391)
30%に比べればだいぶましですが、
現代のこの日本で10%弱は死亡するというこの病気、
やはりすごく怖いなと思うわけです。
ちなみに死亡しなくても、
平均入院期間は35日、半数以上は人工呼吸器の使用が必要で、挿管した患者の77.5%に気管切開を要したようです。加えて、生存者も後遺症が残る人が多く、生存者の約4割が施設退院になっています。
(Journal of critical care 44 (2018): 388-391)
ね、おそろしいでしょ?
死亡しなくても、かなりの医療資源を長期間に渡って投入し、あげく、救命できても後遺症が残り、自宅に帰れない人が多い疾患…
ちなみに私個人が主治医で破傷風を見たことはありませんが、
周囲のドクターが診療しているのを横で見ていると、
バイタル含めた全身管理が極めて大変そうでした。
(Drは国家試験で勉強しましたね、自律神経の嵐、ってやつです )
正直、内科医として、あまり見たくない病気の1つです。
さらに行きます。
そんな大変な破傷風ですが、
日本は「先進国の中で抜群に発症率が高い」のをご存知ですか?
一般的に欧米では、100万人あたり0.1-0.2人の発症率である破傷風。
日本では1.0人/100万人と、欧米の約5-10倍の発症率です。
この発症率の高さの要因はいくつかあると思われますが、
1つは1967年より以前は破傷風の予防接種は定期接種になっていない
=高齢者に免疫がついていないこと
もう1つは医療者に正しい破傷風の知識がついていないことがあると
個人的には考えています。
ちなみにそんな破傷風は災害後に増えることは知られており
特に潜伏期間が3日~3週間と考えると、ここから約1ヶ月はかなり意識して
ERで破傷風は見つけないといけないです。
もっといえば、そんな破傷風にさせないための予防が大事なわけです。
今日の標語
破傷風は恐ろしい。日本の発症、欧米5倍。
さて、次回以後、破傷風を予防するにはどうしたらよいかを
もう少し詳しく解説していきます。
日々是勉強!