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ER混雑、どう対処する?

救命士や若手医師、ER看護師に向けて独自のエビデンスとその配送ラインを!

と銘打って月・木の平日週2回更新しているこのブログ。

今回のシリーズは

主にER・当直に関わる若手医師向け(+ER看護師)にお話。

ER滞在時間って意識してるよね?っていうお話です。

どこまでも増える?!救急車

2040年まで高齢化はどんどん進み、当然高齢者になるほど救急車の要請件数は増え…。。例えば、横浜市は2030年頃までに、現在の救急出動件数は1.36倍と予測しているとか。数字の多少の差こそあれ、多くの地域で似たようなことが言えるんでしょうね。

つまり、ほっとけば、ER・当直業務はもっと忙しくなる!です

(病院管理者の人に本気で言いたい、ますます救急は忙しくなる=ニーズが激増することを知って対策打っていますか?打っていないなら、つぶれますよ、あなたの病院の救急部門!!)

さて、この対策は

Inputのコントロール:救急車要請の適正化

Throughputのコントロール:ER/病院の診療機能を拡張、ERでの診療過程

Outputのコントロール:速やかに帰宅・入院へ

の大きく3つに大別されるんだそうです(Ann Emerg Med 2003;42:173)

もちろんどれも大事なことなのですが、今回のシリーズはThroughputとOutputのところに注目して、少し色々考えてみます。

Throughput:人員に注目

福井大学のERで有名な林寛之先生らが日本でこんな研究結果を発表しています

http://www.fasd.or.jp/tyousa/pdf/h24taizai.pdf

救急外来の滞在に影響する因子は何か?というまさにズバリの研究。

これによると、関連する因子としては

①患者の年齢(年齢があがるほど滞在時間があがる)

②検査(特に採血検査、MRI、CTの順)

③人員

④病床利用率

などでした。

特に今回は人員に注目してみましょう

実はここで興味深い結果が…

ER医(ERになれた医師)は1人人員配置が増えるごとに、ER滞在時間が1患者あたり2分ほどずつ有意に短くなる

一方で、

初期研修医の数は1人人員配置が増えるごとに、ER滞在時間は1患者あたり0.97分有意に伸びる

という結果が出ています。

勘違いしては困るので、あえて明言しますが、「だからERに研修医はいらない」という意味ではありません。今後、救急や総合内科の領域が面白いなと思ってくれる若手を多く育てなければいけないため、「一見、今は効率悪くなっても」研修医の人たちにERの現場に入ってもらい、一緒に診療することはめちゃくちゃ大事です!将来の投資という意味合いでしょうか。

…が、「研修医だけに任せておく」とERは混み合って混乱の一途になる可能性が高いとは言えます。実際、私が知る範囲で、今も地方では、救急や当直をほぼ研修医に任せて、ほとんど上級医が現場に来ないということがあるようです(ちなみに本来はいけません。厚労省の指針に大きく反しています。…が、実情でそういうところも悲しきかな、あるということです)だいたい、そういう病院の救急部門・当直は”終わって”います。一方で、なぜ初期研修医もそういうところに飛び込むか個人的にはよくわかりません。最初の大事な数年を指導されずに変な癖をつけたら、医師人生一生台無しでしょうに…(あ、毒を吐いてしまった…)

学生諸君は、「当直は病院の教育体制・危機管理体制の巣が出ているので、そこを要チェック」ですよ!

…って、脱線しちゃいました。

話を元に戻します。

ERの混雑時の人員は、如何にERに慣れた医師を十分に配置できるか

(不慣れな医師だと、現場が混乱して逆に悪化することも…よく経験します)

ということで、

私の組織では

ERが空いている時は、研修医の先生たちに存分に動いてもらい、途中途中で上級医がフィードバックという形を取っていますが、

混雑時には、ERに慣れている1人がER全体統括と看護師への系統的指示に特化し、各患者さんの診療実働部隊は専攻医、初期研修医がそのお手伝い…

とモードを使い分けています。

ERの混雑も「科学」であり、どう対処するかは「根性論ではない」んですよね。

次回以後は、ER混雑の対処に、もっと特効薬:病院稼働率

について少し共有してみたいと思います。

日々是勉強!

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