ERと病床稼働率の蜜月関係?!
救命士や若手医師、ER看護師に向けて独自のエビデンスとその配送ラインを!
と銘打って月・木の平日週2回更新しているこのブログ。
今回のシリーズは
主にER・当直に関わる若手医師向け(+ER看護師)にお話。
ER滞在時間って意識してるよね?っていうお話です。
病棟に空きが有るって、救急やるならすごく大事
先日からお話しているように、基本的にはむこう10-20年は残念ながら救急車台数は増える一方の見込み。つまりそれを見越してどう救急/当直の体制を構築するかはすごく医療戦略上、すごく大事なわけです(それをわかっていない中~大規模病院の管理者のなんと多いことか…)
どうしても今後混雑は悪化することが予想されるER。
では、混雑の解消にはどんな因子が重要なのでしょうか?
その点で、先日ご紹介した福井大学ERの林寛之先生らの研究報告は1つの示唆を与えてくれます。http://www.fasd.or.jp/tyousa/pdf/h24taizai.pdf
ここではERに慣れた医師の数は混雑解消に寄与ということをお伝えしました。
他には(ここでは有意差は厳密には出てはいませんが)
病床利用率は大きな解消因子になりえそうです。
実際に他の研究でこんな報告があります。。
①内科病床稼働率が93.7%から90.2%に低下(つまり、すこしベッドに空床がある=速やかに入院できる体制)したところ、ER待ち時間が4時間以内が、33%から51.4%に上昇した(Ann Emerg Med 2016;33:85)
とか
②病床利用率が80%を超えると、5%増加ごとに、ERから入院するまでの時間が34.3分延長する(Ann Emerg Med 2009;53:767)
なんて報告もあります。
要は、ベッドに少し空きがあって、ERの患者さんをすぐに入院させられる
そしてそこから入院診療が速やかに開始できるというのは、ERの過剰な混雑を回避でき、そして患者さんの予後悪化を防ぐ可能性があるというわけです。
なので、
普段の診療以外に、現在の所属する組織で私は
A:病床管理・病診連携を担当する委員会に入り、退院調整看護師やMSWの教育体制に尽力したり、
B:subacuteの入院患者さんを転院で受けてくれる病院さんを積極的に選択肢を増やす活動
をしていたりします。
このERはじめとする「入り口-出口問題」はあまり理解してくれない院内スタッフも多いですが…
(そして、医療過疎の地域なので、理想まではとても遠いですが、でも一歩ずつゆっくりですが、前進はしています)
今日の標語
ER混雑解消狙うなら、病床稼働とセットで対策!
次回以後は、ER滞在時間と検査について、少し考察したいと思います。
日々是勉強!