RSIで筋弛緩は大事だが?
ABCの安定を極めると称して、お送りしています気道管理シリーズ
いざ、挿管の手順の解説を進めています。
前回はその中鎮静薬の少し細かいお話をしました。
さて、今日はその続き:筋弛緩薬です。
結論から言います。個人的にはロクロニウムほぼ1択です。
その理由(私見混じりですが)をお話していきます。
以前もお話したようにERでの挿管で適切に筋弛緩を使った挿管(≒RSI or DSI)は挿管成功率をあげて、合併症変わらない(Am J Emerg Med. 1999;17:141-143.)とされます。つまり、ERでの挿管に筋弛緩薬はうまく使ってあげたいところです。
さて、現在RSIで使用される筋弛緩薬は
サクシニルコリンとロクロニウムの2種類です。
サクシニルコリンの特徴は
メリット(Annals of Pharmacotherapy 2014; 48: 62)
①すぐ効く、作用時間短い
②容量調節はさほど気にしなくてOK
デメリット(Am J Health Syst Pharm. 2001;58:2287. Can Anaesth Soc J.1986;33:195)
①悪性高熱
②追加投与でphase 2ブロックという徐脈・低血圧のリスク ③頭蓋内圧あげるかも?
このデメリットの悪性高熱が一度起きると厄介です。詳細はここでは省きますが、ダンドロレンなどの特殊な薬を使いながら治療が必要で、それでも死亡率が比較的高い疾患です。
一方、ロクロニウムの特徴は
メリット
①比較的すぐに効く
②禁忌が少ない(同薬でのアナフィラキシー+Lambert Eatonでは避けたほうが無難と記載しているものも)
デメリット
①作用時間が長い
しかし、このデメリットも特異的拮抗薬:スガマデックスを使えば、サクシニルコリンに比べて極端な欠点にはならないかと思われます。
ただし、スガマデックスは過信してはいけなくて、効果発現に3分ほどかかるということです。換気困難でみるみるSpO2さがっている状態では3分はあまりに長い…。
加えて, スガマデックスはめちゃ高い…
(スガマデックス500mg 2万円強)
しかも、全身麻酔のときにゆるくリバースするときには4mg/kgでよいですが、緊急リバースの時には16mg/kgの高用量が必要であることも要注意!
(60kgの人では960mg ≒1000mgのリバース→4万円…)
もちろん必要時には投与しますが、使わずに対応できるなら、使わないに越したことはないですね。
筋弛緩はロクロニウムよりもサクシニルコリンの方が、よい挿管条件に持っていける割合が少し高い( Anaesthesia. 2017;72:765)
なんて報告もあるので、あえてサクシニルコリンをこのんでRSIするDrもいらっしゃるかもですが、
差はあまりないという報告もあり、
個人的にはデメリットを考慮すると、やっぱりロクロニウムかなぁと感じています。
まとめます
RSIでの筋弛緩はロクロニウムが主流
ただ、サクシニルコリンも悪性高熱に気をつけ
れば、よい薬!
日々是勉強!