top of page

ERでの挿管に、フェンタニルって??

ABCの安定を極めると称して、お送りしています気道管理シリーズ

今回も研修医・若手医師向けの内容です

(救命士の方、しばらくお待ちを。。)

ERでの緊急挿管の手順を前回からお話しはじめていました

「サンタ前薬草ww」の不思議な?!ゴロを皆さんにご紹介しました

さん:酸素投与

た:体位

前:前投薬

薬:鎮静・RSIなら筋弛緩も

草:挿管

w(草):挿管が適切にされたかの確認

w(草):挿管後の管理

今回はその中でも前投薬:特にフェンタニルのお話をします。

酸素投与はこちらなど、体位についてはこちらなどをご参照あれ)

さてさて、

鎮静(Rapid sequence intubationならほぼ同時に筋弛緩も)する

…その前に、投薬をすることで一部の内臓に負荷をかけないように…というコンセプトが前投薬です。

具体的には、挿管中に

・徐脈なるかも(脊髄損傷、βブロッカー内服など)→アトロピン

・頭蓋内圧上昇するとまずい(SAHなど)→リドカイン

などです。

今回はその中でもフェンタニルについてお話します。

個人的には今まで、「鎮痛バンザイ!」「痛いのはかわいそう」という強い信念があったので、ERでの緊急気管挿管でもほぼ全例フェンタニルを投与しておりました…が、結構これ血圧さがるんですよね…ということは、内心感じていました。

…が、今回以下の文献に出会い、

ERのルーティーンの挿管前フェンタニル投与はやめようと感じました(結局、麻薬管理の問題でERに置けない事が多く、薬剤部などに取りに行くのが面倒ですしね…)

https://farm2.staticflickr.com/1680/25548538410_6d028f45e5_b.jpg

今回ご紹介する文献は Am J Emerg Med. 2018;36(11):2044 です

2012 年 2 月から 2016 年 11 月までの日本の 14 施設の ERでの多施設前向き研究で、対象は迅速挿管を受けた全ての成人非心停止患者です。患者はフェンタニル群と非フェンタニル群に分けられました(全患者 1263 人、フェンタニル群466 人)。ER での挿管後低血圧(収縮期血圧≦90mmHg)を調べてみると、フェンタニル群は、非フェンタニル群と比較して、挿管後低血圧の高いリスクでした

(調整 OR、1.87、95 %CI、1.05-3.34、P=0.03)。

加えて、別の論文ですが、

このフェンタニルの前投薬はどの鎮静薬でも同様に血圧低下の増加と関連しており、特に血圧上昇作用のある鎮静薬:ケタミンでも残念ながらフェンタニル投与は血圧低下をさせてしまうという結果も

(Acta Anaesthesiol Scand. 2019 Jan 15. doi: 10.1111/aas.13314. [Epub ahead of print])

血圧保つためにケタミンわざわざ選んで鎮静しているのに、

(管理人は敗血症性ショックの挿管では好んでケタミンを使っています)

フェンタニルでおもいっきり帳消し

…どころか、血圧さげていたなんて…

ということで、

ER(どうしても状態が悪い人が集まるのでやむなしですが)での緊急気管挿管でのフェンタニルは血圧を下げるので、ルーティーンには使いづらく、使う際にも小分けにして投与などの注意が必要

です。

日々是勉強!

bottom of page